ベータアラニンは、プレワークアウトによく含まれる「ピリピリ感」をもたらす成分です。
ベータアラニンの効果は科学的根拠も固く、スポーツ栄養会では期待が高いです。
本記事では、ベータアラニンの効果や科学的データ、摂取量や摂取タイミングなどを解説したいと思います。
ベータアラニンとは *(1)(2)
ベータアラニンは、体内に取り込まれるとカルノシンという物質を生み出すために使われます。
そのカルノシンは、筋肉が酸性に傾くのを防いでくれます。体内のカルノシンは身体が酸性に傾くのに反応し放出され、中和します。
つまり、乳酸が溜まって筋肉が疲労するのを防ぐということです。
ベータアラニンは食事からの摂取が限られてしまっているため、カルノシン産生も制限がかかってしまいます。*(3)
そのため、サプリメントとしてベータアラニンを摂取することで、カルノシン産生が促進され、パフォーマンスが向上すると考えられています。
ベータアラニンの研究と効果
ISSNのベータアラニンに関する見解 *(4)
冒頭で述べた通り、ベータアラニンは科学的なデータがしっかりしています。以下、国際スポーツ栄養学会(ISSN)がレビューに記載しているものです。
...ベータアラニンの摂取によって、レップ数の向上、除脂肪体重の増加、膝伸展トルクの向上、トレーニングボリュームの増加が示されています。
ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
ISSNはベータアラニンを「効能を支持するための根拠が強く、安全」と分類しています。クレアチンやカフェインなどと同様です。
また、ベータアラニンが効果を出すためには前提としてカルノシンが増えなければいけませんが、それも研究で確認できています。
研究によって、ベータアラニンを数回に分けて、28日間4〜6g経口摂取することで、カルノシン濃度が高まるとわかっています。
ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
カルノシン濃度が高まることでパフォーマンス向上に繋がるのですが、その効果は1〜4分間の運動にて大きな効果が示されているそうです。
つまり、トレーニーにとってはかなりの高レップやスーパーセットでセットが長引かないと、直接的なパフォーマンス向上は期待できないかもしれません。
とはいえ、除脂肪体重の向上やボリューム向上はトレーニーも欲しい効果ですので、研究を見てみましょう。
ベータアラニンの除脂肪体重への効果 *(5)
- 8週間、1日4gのベータアラニンを摂取
- 対象は大学のレスリング(WR)とアメフト(FB)選手
- WR:両グループとも体重が落ちたが、ベータアラニン摂取群は除脂肪体重を0.5kg向上
- FB:両グループとも体重が増えたが、ベータアラニン摂取群は除脂肪体重を0.95kg向上、プラシーボ群は0.5kgのみ。
学生アスリートを対象に、パフォーマンスや除脂肪体重を測定したものです。
レスリングとアメフトのチームが参加していますが、どちらもベータアラニン摂取群の方が除脂肪体重を向上させられています。
統計的有意差は出ていませんが、「実践的観点では有意」と述べられているように、期待してもいいと思います。
ベータアラニンのトレーニングボリュームへの効果 *(6)
- 30日間、1日4.5gのベータアラニンを摂取
- ベンチプレスのトレーニングボリュームが有意に向上
- 他の種目も向上の傾向あり
こちらも学生のアメフト選手を対象にパフォーマンスを測定した研究です。
先ほどの研究結果の要因とも考えられる、ベータアラニン摂取によるトレーニングボリュームの向上が見られています。
このトレーニングボリュームの向上は、一般的なトレーニーにとっても非常に意味のあるものだと思います。
ベータアラニンが直接的に瞬発系のパフォーマンスを向上させなくとも、トレーニングボリュームが向上してくれれば、筋肥大や筋力向上に繋がるからです。
トレーニングの内容も、ベンチプレスとスクワットの6〜8RMで4セット行っており、極めて実践的に感じます。
トレーニングボリュームについて
ベータアラニンの摂取量と飲み方
摂取量
ベータアラニンは、1日4〜6g摂取すると良いでしょう。多くの研究がこの範囲で実施されていて、効果も見えています。
また、12gまで摂取する意味もあるかもしれないみたいですが、個人的には必要ないかと思います。気になる方は試してみてください。
トレーニングボリュームを向上させる点、比較的長時間の運動(1〜4分)にて効果が出る点を考慮すると、高ボリュームの時期だけに狙って摂取するのもありでしょう。
セット時間が長い高強度テクニックを利用するトレーニング期間や高レップ期間に、ボディビルダーが1日3〜5gベータアラニンを摂取するのは理にかなっているかもしれない。
Nutrition Recommendations for Bodybuilders in the Off-Season: A Narrative Review.
摂取タイミング
クレアチンと同じように、ベータアラニンは効果が出るのに時間がかかります。
そのため、摂取タイミングはいつでも大丈夫でしょう。
筋中カルノシン濃度が高まり効果が出始めるのは、4週間ほどかかるようです。*(7) そのため、摂取後すぐに効果が出なくても焦る必要はないです。
また、ベータアラニンを摂取すると身体がピリピリと痒い感じがします(後述しますが、ベータアラニンフラッシュというものです)。
その感覚が不快だったら就寝前は避けたり、逆に気合が入るのであればトレーニング前に摂ったり調整するといいと思います。
ベータアラニンフラッシュは安全・危なくないか
この身体がピリつくベータアラニンフラッシュですが、特に害のない副作用です。*(1)
プレワークアウトにベータアラニンが含まれていることが多いのは、この副作用を逆に興奮作用的に利用するためでしょう。
人によって差があり、ベータアラニンフラッシュがこない人もいます。体験談ですが、使用するにつれ無くなってきたと言っていた知人もいます。
オススメのベータアラニン
ベータアラニンを選ぶ時に気にするのはただ1つ、グラム単価です。
物によって差があるわけではないので、安い物を買えば大丈夫でしょう。こちらのアマゾンにある商品はかなり安いのでおすすめです。
強いて言えばドーピング検査のある選手は、インフォームドチョイスなどを取得している商品がいいかもしれません。
ベータアラニン:まとめ
以上がベータアラニンに関してのまとめになります。
重要なポイントを念の為復習しておきます。
- クレアチン同様、身体に溜まって効果が出る
- 1日4〜6gをどこかしらのタイミングで摂取する
- 直接パフォーマンス向上が期待できるのは1〜4分の運動
- トレーニングボリューム向上によって除脂肪体重が向上する可能性あり
トレーニーにとって直接的にパフォーマンスが向上する訳ではありませんが、ボリュームを向上させて筋肥大に繋がるかもしれない点は、個人的にシトルリンマレートに若干イメージが似ています。
そのシトルリンマレートよりも科学的根拠はしっかりしているので、どちらかを摂るとしたらベータアラニンの方が良い気がします。(パンプも求めていたらシトルリンマレートの方が上かもしれません。)
パフォーマンス向上がトレーニーには関係ないという点(1〜4分の運動)から、実はベータアラニンは摂取していなかったのですが、今回調べてみてちょっと試そうと思いました。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献
- Beta-Alanine - Examine.com
- 6-7.世界のトップアスリートの"新"常識〜ベータアラニン - DNSZONE
- Saunders B, Elliott-Sale K, Artioli GG, et alβ-alanine supplementation to improve exercise capacity and performance: a systematic review and meta-analysisBritish Journal of Sports Medicine 2017;51:658-669.
- ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
- Kern, Ben & Robinson, Tracey. (2011). Effects of β-Alanine Supplementation on Performance and Body Composition in Collegiate Wrestlers and Football Players. Journal of strength and conditioning research / National Strength & Conditioning Association. 25. 1804-15. 10.1519/JSC.0b013e3181e741cf.
- Hoffman JR, Ratamess NA, Faigenbaum AD, Ross R, Kang J, Stout JR, Wise JA Short-duration beta-alanine supplementation increases training volume and reduces subjective feelings of fatigue in college football players. Nutrition Research (New York, N.Y.), 01 Jan 2008, 28(1):31-35 DOI: 10.1016/j.nutres.2007.11.004 PMID: 19083385
- Iraki J, Fitschen P, Espinar S, Helms E. Nutrition Recommendations for Bodybuilders in the Off-Season: A Narrative Review. Sports (Basel). 2019;7(7):154. Published 2019 Jun 26. doi:10.3390/sports7070154