トレーニングプログラムをやめる前にこれを読め

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トレーニングプログラムをやめる前にこれを読め
本記事はJuggernaut Training Systemsの許可を得て、英語から翻訳しています。https://www.jtsstrength.com/thinking-ditching-program-read-first/

序論

「自分には効果がなかった」

「高頻度でスクワットを試してみたけど、自分には向いてないな」

「ベンチプレスで手幅広くしたけど、重量落ちたわ。俺は狭い手幅の方がいいってことかな」

このようなセリフを何度も聞いたことがあります。

新たなテクニック、昔からあるテクニック、もしくは自身の体型に適していると考えられるテクニックでさえ、試してみたけどメリットがなかったという話です。

誰もが過去に経験があることでしょう。想定ではそれによって改善できるはずなのに何も変わらず、むしろ悪化してしまう可能性もあります。

新しく加えた変化の効果が薄いことは確かにあります。

しかし多くの場合は、正しく効果を検証できていないだけで、そのほとんどが検証タイミングの間違いによるものです。

その主なパターンを確認していきましょう。

フィットネス-疲労

ある筋肉群や種目のトレーニング量をもっと増やせば、筋肉は成長し強くなります。

しかし、トレーニングを増やせば疲労も増え、新たな適応の全て、もしくは大部分が隠れてしまいます。

疲労を抜いた時になってやっと、その変化を確認、体感できるのです。

図書館で一日中勉強しても混乱して思考停止するだけで、その後しっかり睡眠を取ることにより、勉強前よりも知識が身についてるとわかるようなものです。

ある種目が高ボリュームなトレーニングプログラムを実施したら(スクワットとしましょう)、疲労を抜くまで、抜かない限りはそのプログラムの効果はわからず、タフなトレーニングサイクルの後では少なくとも1週間のディロードが必要となります。

そうしないと、疲労によってフィットネスが隠れ、退屈な勉強の直後にテストを受けるのと同じになってしまいます。

ネット上のトレーニング掲示板を見ると、上記のようなことがたくさん見受けられます。

「シェイコ(Sheiko)のトレーニングルーティーンの途中でマックス測定したけど、下がった...自分には効果がなかった。」

そうですね、自動車整備工が車を修理している間に車を運転しようとしても、良い結果は出ないでしょう!

少なくともプログラムが終わるまで待ってください!

そして終わるまで待った人の中には、次の日にマックス測定する人がいます。どうぞ、一番身体が傷ついている時にマックス測定してください。

このような人たちは、低ボリュームトレーニングだとフィットネスが低下する程疲労が蓄積されないため、高ボリュームのトレーニングプログラム(最も効果的)から離れ、低ボリュームトレーニングプログラム(最も効果がない)を行います。

いつでも測定の準備ができていて、測定結果も良いです。

その代わり、疲労するほどトレーニングすることが一切ないので、長期的には最適な結果を得られません。

スクワットで180kg上げるのは最高ですが、一年後に185kgしかできないのであれば話は別です。

弱点の筋肉群

ある種目を伸ばすためには、弱点の筋肉群を伸ばす必要性もたまに出てきます。

そして、それは効果的です。胸筋が大きくなれば、特に胸が弱点だった場合、ベンチプレスはほぼ間違いなく伸びるでしょう。

この点に関しても、ある注意点を考慮しなければいけません。

まず最初に、筋肉の成長によって挙上重量に変化が出るためには、それなりに時間がかかります。

中級者や上級者の場合は特に、少なくとも1ヶ月は集中しないと、種目におけるパフォーマンス向上が見られる程に筋肉を大きくできないでしょう。

2つ目に、個々の筋肉におけるフィットネス-疲労を考慮しなければいけません。

通常のベンチプレストレーニングの後に数セットダンベルフライを入れて、胸筋が非常に大きくなっても、その後は筋肉が傷ついて疲労しています。

1週間程、胸トレーニングを抑えて胸筋を回復させた後のみ、筋肥大によるパフォーマンス向上に気づけるでしょう。

最後に、昔よりも強くなることで、個々の筋肉がより大きく出力するようになります。

これは、その種目における協力筋と拮抗筋とのバランスが取れていなければいけません。

大腿四頭筋がもっと強くなった場合、スクワットで重心が前にずれ始めるかもしれず、上体を真っ直ぐ保持するために、ポステリアチェーン筋群が今までより早いタイミングで動作するようになるまで、時間を要するでしょう。

こういった個々の筋肉における筋力の変化に適応させるためにテクニックを変えるのは、多くの場合数週間と時間がかかります。

マックス測定のタイミングが早すぎると、新たに得た筋力に身体が慣れていないと判明するだけです。

テクニックをゆっくりと変える

今現在のテクニックが客観的に見てどんなに悪いとしても、神経系はその方法に「慣れて」います。

悪かったとしても、身体が効率的になっているのです。

急速に新しいテクニックに変更すると、テクニックが余程強力なものでない限り、パフォーマンスは向上するのではなくて即座に落ちてしまうでしょう。

本来であれば素晴らしいテクニック改善であったものを、本当に多くの人がこのタイミングで、身体に適応させる時間を設けずに、やめてしまいます。

テクニックを変える方法は2つあります。急速にやるか、ゆっくりやるかです。

どちらも上手くいきますが、テクニックを変える本人が、それぞれに応じたメンタルと姿勢で行わなければいけません。

急速な変化では、即座にパフォーマンスが落ちる、少なくとも向上せず、ゆっくりと改善されてやがて現在のパフォーマンスを超えるという点を、事前に理解しておく必要があります。

私が高校生時代に、アーチと肩甲骨の寄せを作ってベンチプレスを行うようパワーリフターに指導された時、ベンチプレスはその日に10kg落ちました。

しかし来週には、5kg伸びました。その次の週には、テクニックに慣れてベンチプレスがさらに5kg伸びました。

そして月末には、過去の記録よりも15kg多くあげられ、その後のパワーリフティング生涯においてベタ寝でベンチプレスをしたことはありません。

想定しておくことが急速にテクニックを変化させる際の鍵となります。パフォーマンスが向上する前に一度減少することを、理解しなければいけません。

パフォーマンスの低下が好ましくなければ、ゆっくりと変化させる方法が良いでしょう。

この場合、数週間に渡りテクニックを調整するという目的のもと、1セッションあたりでは非常に小さく変化させるだけです。

この典型がエリック・リルブリッジが最近行った、ハイバーからローバースクワットへの移行です。

エリックは数ヶ月に渡り、トレーニング時にほぼ毎回、数mmバーの位置を下げました。(※ "a fraction of an inch"を数mmと訳しています。)

彼のスクワットは重量が落ちることなく、それどころか今は過去のハイバーの記録よりも45kg近く伸びています。

フェーズ増強作用

フェーズ増強作用は、論理的に次のフェーズを考慮して行われたフェーズは、その次のフェーズ、もしくは複数のフェーズを効率良くするという考えです。

例えば、小さい筋肉よりも大きい筋肉の方が強くなれるため、最初に(数ヶ月)筋肉のサイズのためにトレーニングし、その後その大きくなった筋肉の筋力を鍛える方が良いです。

その後、高重量のレップ幅(1〜3レップ)で最大重量挙上に集中して、最大重量挙上に必要なテクニックや神経系を最大化させると良いです。

その時になってやっと、効果が最大限に見られます。

試合の4週間前にフロントスクワットを10レップで何セットもやって大腿四頭筋を大きくしようとしたら、そのサイズを筋力をつけたり、最大重量にピークさせる時間がありません。

そうではなく、サイズと筋力のためのトレーニング効果を両方最大限見るためには、サイズを大きくしたら筋力フェーズ(3〜5レップ)を行い、筋力フェーズを行ったらピーキングフェーズ(1〜3レップ)を行いましょう。

パワーリフティング界において、高レップ・ボリュームの筋肥大フェーズの直後に最大重量を行う行為は常にあるように思えますが、トレーニングに関して思わしくない(そして誤った)結論に導かれるだけです。

テクニックの大きな変化

テクニックを大きく変化させた場合、最大限の効果を見るためには数ヶ月かかります。

ナローからスモーデッドリフトに移行した場合、文字通り前述した要素が全て同時に適用されます。

スクワットでワイドからナロー(もしくはナローからワイド)でも、ベンチプレスで超ナローから競技形式のワイドへ移行するのも同じです。

これらのような大きな変化は、ほとんどの場合1マクロサイクルが必要となり、つまり試合間の期間全て(通常3〜6ヶ月)を使って、新たなテクニックで筋肉、テクニック、筋力、ピーキングを磨いて挙上重量を最大化させなければいけません。

「スモーは良くなかった」と1週間試した後に言うのは、トレーニングのアプローチとして賢くはありません。


JTSはパワーリフティングやウェイトリフティング、ストロングマンのコーチングを行っているアメリカトップのコーチンググループです。

Mike Israetel

Mike Israetel

Mike Israetelは、トレーニング科学の教授で、パワーリフティングやボディビルディングの競技経験もあり、さらに米国オリンピックトレーニング地でのスポーツ栄養コンサルタントを担当した経験があります。

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