最近「筋トレ セット数」というキーワードで本サイトを見に来てくださる方が増えてきました。
過去に書いたのは1日単位や週単位でまとめたり、頻度だったり、サイクルだったりとセット数に対してまとまった記事がなかったので、これを機にまとめたいと思います。
セット数に関しては議論も多く、それほど個人差が大きい要素だと思っています。とはいえ、基準を学んだ上で調整して自分に合う数字を見つけるのが重要です。
それでは確認していきましょう。
最適なセット数を考える
そもそも「筋トレって何セットやればいいの?」と聞く時は、人によって聞いているものが違うと思います。例えば...
- 1種目あたりのセット数
- 1日あたりの部位別セット数/合計セット数
- 1週間あたりの部位別セット数/合計セット数
このように様々な切り口がありますが、本記事では1週間あたりの部位別セット数からまとめていきたいと思います。
トレーニングの大前提として漸進性過負荷の原則があるので、トレーニングボリュームを徐々に増やしていく必要があり、一般的にトレーニングは1週間単位で管理されることが多いからです。
※トレーニングボリュームは正確にはセット数xレップ数x重量ですが、本記事ではセット数とほぼ同じ意味で使用します。
1週間単位でボリュームを管理し、1日あたり・1種目あたりのセット数は、その1週間単位のボリュームがわかった上で決めるべきでしょう。
ということで、まずは1週間あたりのセット数を確認しましょう。
1週間あたりのセット数
超簡単にまとめると、まずは以下の通りです。
- 筋肥大を最大化させるためには1週間あたり最低10セット
- サイクル、ディロード、食事、睡眠、ストレス、トレーニング歴といった要素で左右される
トレーニングボリュームが増えるにつれて、筋肥大などの伸び幅も大きくなっていくことが様々な研究でわかっています。
ショーエンフェルドらによる2016年のメタアナリシスでは、以下のように考察されています。
筋量最大化のためには、筋群毎に少なくとも週10セットは行う必要があると思われる。
もちろん、身体の回復には限界があるので、何百セットもやればすぐにロニーコールマンになれる訳ではありません。
セット数の上限は最低必要量よりもさらに個人差が大きいと思われますが、おそらく一般的に想像されるよりも高い数字です。
マイクイズラテルが共同執筆した2018年の研究では、セット数の上限に関して以下のような結果が述べられています。
1週間で1種目あたり1RM60%10レップで10セットから32セットまでボリュームを増やしても、トレーニングによる筋肥大が明確に停滞することはなかったと示している。
引用元:ホーンら 2018 *(2)
上記の研究では32セットまで増やしても、ボリュームに比例して筋肥大しています。
また、ショーエンフェルドらによる2019年の研究でも、上半身種目は週30セット、下半身種目は週45セットまで実施し、セット数に比例した筋肥大が確認されています。*(3)
しかしながら、筋力(スクワットとベンチプレスの1RM)では、ボリュームに比例して伸びませんでした。8週間という短い期間も影響しているでしょう。
じゃあ誰でも1部位あたり週45セットやればいいのかというと、そうではないと思います。
前述した通り回復量には限度があり、個人差もあります。初心者は確実にここまでのボリュームを必要としていませんし、デッドリフト400kgあげる人がデッドリフト20セットできる訳でもありません。
あくまで週10セットをベースラインとし、上限は徐々に増やして確かめるしかないでしょう。(少ないセット数で成長できるのであれば、無理にセット数を増やす意味はないです。)
1週間のセット数については、【最低10セット?】筋肥大に必要な1週間のセット数についての研究と考察 でもう少し詳しく解説しています。
最適なセット数は流動的
10〜45セットとかなりざっくりとした幅が生まれてしまいましたが、結局のところ様々な要素によって最適なセット数は変化します。
サイクル、ディロード、食事、睡眠、ストレス、トレーニング歴といったものに影響されますが、重要な点は2つです。
- 回復力がどう影響されるか
- 筋肥大・筋力向上に必要なセット数がどう影響されるか
回復力に影響を与える要素
1つ目は、先ほどの「身体の回復以上にトレーニングしても意味ない」という所に関係します。
増量中、長い睡眠(8時間以上)、ストレスが少ない環境だと、回復力が高まるためその分セット数を増やせることになります。
逆に、減量中、睡眠不足、ストレスの多い環境では、回復力が落ちているため、セット数を抑える必要が出てきます。
また、ディロードを行っている時などは身体を休めることが目的のため、最低限にセット数を減らす必要があるでしょう。
筋肥大・筋力向上に必要なセット数に影響を与える要素
2つ目は、望んでいる適応を得るために何が必要になるか、という話です。
トレーニング歴が長いと回復力も高まりますが、漸進性過負荷の原則により更なるボリューム(セット数)が必要になります。
反対に、トレーニング初心者はちょっとの刺激で成長できるため、必要以上にセット数を増やさなくても大丈夫です。
また、純粋な筋力向上を目的としたサイクルの場合(パワーリフティングにおけるピーキングなど)では、実際に身体が最大限力を発揮できるように、セット数を落とさないといけないかもしれません。
個人差に関しては、パワーリフティングの頻度について考えるで簡単にまとめているので、別途確認してみてください。
セット数の調整はサイクルの基本
上記のように最適なセット数は環境や目的に応じて変化するものなので、サイクルを組む時(トレーニングメニューを組む時)に非常に重要になります。
幸いなことに、マイクイズラテルがそのボリュームの調整方法を以下のように紹介しています。*(5)
- MV:筋量維持ボリューム
- MEV:最小効果的ボリューム
- MAV:最大適応ボリューム
- MRV:最大回復ボリューム
ざっくり書くと、「筋量維持ボリューム」が1週間あたり8セット前後、「最大回復ボリューム」が22セット前後です。
「腕と脚が同じセット数でいいのか?」と考えた人もいると思いますが、その通りで一般的には部位毎にセット数は変わります。
その目安のセット数や、MV・MEV・MAV・MRVの判断の仕方など、この記事ではまとめきれない量になりますので、詳細は以下でご確認ください。
マイクイズラテルのトレーニング理論
1週間あたりの「合計セット数」
ここまで基本的に「部位別セット数」について話してきましたが、それらの「合計セット数」の話はしていませんでした。
ここは非常に単純な話で、先ほどから引き続き「身体の回復力を超えるセット数はダメ」なだけです。
つまり、全部位を早く成長させたいからといって、全部位のセット数を一気に増やすと、当然ながら身体が回復に追いつきません。(特にトレーニング歴が長い場合)
伸び幅が落ちる可能性もありますし、下手すると怪我に繋がったり、オーバートレーニングの症状が出たりします。
筋肉毎に回復限度があるのと同様に、身体全体でも回復限度があるので、それを考慮してトレーニングを組みましょう。
1日あたりのセット数
1週間あたりのセット数について理解できたので、次に1日あたりのセット数を考えましょう。最初に要点だけ書いておきます。
- 6〜8セットが適切なセット数かもしれない
- 1週間に必要なセット数が10を大きく超える場合、頻度を増やして分けた方が良さそう
前提として、1週間単位のボリュームが多い方が伸び幅は大きいです。つまり、1日単位でもセット数が多い方が基本的には効果的ということになります。
しかしながら、バーバロらの2019年の研究で5、10、15、20セットを比較した結果、5、10セットで最も良い結果が出ています。*(6)
つまり、1日のセット数が多すぎると、逆に効果が落ちてしまう可能性があります。
一方で「どこまでセット数を増やしていいのか」という判断は、非常に難しいものです。
先ほどのショーエンフェルドらの研究(3)では、一番セット数の多いグループは上半身種目を1日に10セット行っていますが、問題ありませんでした。
ジェームズ・クリーガーが行ったメタ回帰分析では、6〜8セットが最も効果的な上限値だと示されています。(セット間で2分以上休憩する場合)*(7)
それに加え、クリーガーは10セットを大幅に超える場合、頻度を増やして1日あたりのセット数を落とした方が良いかもしれない、と述べています。以下の2つの研究からです。
- ザロニらの2019年の研究で週15/30セット行った際に、週1/2回15セットよりも週5回3〜6セットやる方が筋肥大の伸び幅が大きかったため。*(8)
- ブリガトらによる2019年の研究において、1週間16セットを1日と2日で分けて行うグループを比較したところ、筋肥大に差はなかったものの、2日のグループの方がトレーニングで扱う重量が伸びていたため。(トレーニング重量の向上もボリューム増加に繋がるため、長期的に考えるとさらに筋肥大が起こる可能性。)*(9)
気軽に考えるとすると、5〜10セットくらいにしておけば大丈夫、という感じです。1セットずれたくらいで大きな差は生まれないでしょう。
筋群によるセット数の差
この1日のセット数には、元々の筋肉の構造や、種目によるダメージの入りやすさも関わってきます。
先ほどの5、10、15、20セットを比較した研究では、大胸筋は10セットより5セット、大腿四頭筋は5セットより10セットで成長しています。
それぞれ種目はベンチプレス・インクラインプレスとレッグプレス・スクワットでしたが、大胸筋種目の方がストレッチがかかりダメージが入りやすいです。
そのため低セット気味の方が向いているとも考えられます。
1日のセット数については、筋トレで1日の最適なセット数は?【やり過ぎは良くない研究結果】 で過去に解説しています。
1種目あたりのセット数
1種目あたりのセット数まで細かくなると、正直データをほとんど見つけられてません。
少なくとも、スクワットだけとスクワット+レッグプレスの効果を比較した研究では、多様な種目を用いた方が大腿直筋と内側広筋筋断面積が大きく増加しています。*(10)
同一セッション内で種目を増やしてボリュームを増やす必要があるかは分かりませんが、現実的に考えると同じ種目を10セットやるよりも5セットを2種目やった方がモチベーションが上がるでしょう。
同一種目をやりすぎるとパフォーマンスが低下し、トレーニングボリュームも減少してしまうため、そういった意味でも分けた方がいいかもしれません。
基本的には1週間あたり・1日あたりのセット数を落とし込んだ上で、1種目あたりのセット数が多すぎる(非効率なパフォーマンスの低下)場合に、種目数を増やしてみるといいと思います。
最適なセット数:まとめ
まとめますと言いながらも曖昧な要素が多く申し訳ないのですが、それだけ個人差が大きく出る部分でもあり、だからこそ人によって意見が大きく変わるものだと思っています。
改めて、目安となる要素を以下に簡単に書き出してみます。
- 1週間あたりのセット数:最低10セット
- 1週間に必要なセット数は様々な要素により変化する
- 1日あたりのセット数:6〜8セットが適切かもしれない
- 1週間に必要なセット数が10を大きく超える場合、数回に分けた方が良さそう
- 1種目あたりのセット数:1日のセット数が多く、1種目だとパフォーマンスが非効率に低下する場合、種目を増やした方が良さそう
セット数を決める際はまずMV・MEV・MAV・MRVといった1週間あたりのボリューム要件があり、1日・1種目あたりのセット数はそれに基づいて分配されます。
また、1日のセット数が多すぎる場合には、トレーニング頻度を増やすことで1日あたりのセット数を減らした方が効果的かもしれません。
(トレーニング頻度はセット数を調整するためのツール、という考えです。頻度に関しては、筋トレの頻度は筋肥大に関係ない研究【重要なのはボリューム】にまとめています。)
繰り返しになりますが、非常に個人差が大きい要素でもありますので、あくまでこれらの数値は目安として捉え、経験を積んで調整していきましょう。
自分で効果的なトレーニングメニューを作成されたい方は、ぜひ筋トレのサイクルの組み方を解説します【参考例あり】 も読んでみてください。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献
- Schoenfeld, Brad & Ogborn, Daniel & Krieger, James. (2016). Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis. Journal of Sports Sciences. 35. 1-10. 10.1080/02640414.2016.1210197.
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- New science on the optimal training volume: extreme training for extreme gains? - Menno Henselmans.com
- TRAINING VOLUME LANDMARKS FOR MUSCLE GROWTH - Renaissance Periodization
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- Set Volume for Muscle Size: The Ultimate Evidence Based Bible (UPDATED MARCH 2020) - Weightology
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