筋トレする上で必ず存在しなければいけないのが、トレーニングメニューです。 そして当然ながら、結果を出す人程効果的で理にかなったトレーニングをしています。
そのトレーニングメニュー作成の基礎となるのが、トレーニングサイクルやピリオダイゼーションという考え方です。
本記事では、トレーニングサイクルの概念や組み方について解説し、いつでも自分で効果的なトレーニングメニューを作れる知識を提供します。
トレーニングサイクルとは
はじめにトレーニングサイクルについて簡単に用語を説明します。
よくパワーリフティング界では「サイクル」と一括りにされていますが、本当は3種類のサイクルが存在します。
- マイクロサイクル
- メゾサイクル
- マクロサイクル
上から短い期間になっていて、マクロサイクルの中にいくつかのメゾサイクル、その中にいくつかのマイクロサイクルという風に構成されます。
一般的に勘違いされていますが、「サイクルトレーニング」はある決まったトレーニングではなく、あくまでトレーニング理論・手法です。
人それぞれ目的に応じた「サイクル」を作成してトレーニングするのが本来のあり方です。
それでは1つ1つの特徴を見ていきましょう。
マイクロサイクルとは
マイクロサイクル(Microcycle)は、トレーニングサイクルの中で最小単位のサイクルになります。
一般的に1週間であることが多いです。月・水・金でそれぞれメニューがあって毎週繰り返すパターンなどです。
もしくは胸・背中・肩・脚・オフをリピートするような5日単位で行う場合、5日間がマイクロサイクルとなります。
つまり、俗にいう「トレーニングメニュー」です。
マイクロサイクル毎に重量やセット数、レップ数を変更するなどして数週間のブロックができあがり、それがメゾサイクルとなります。
マイクロサイクル内のセット数や頻度
マイクロサイクルの内容はボリュームから逆算してセット数やレップ数、頻度を決める必要があります。
特に「この頻度やセット数が筋肥大に最適」というものはありませんが、基本的には1部位週10セット以上・週2回はやった方がいいでしょう。
詳しくは以下の記事にて解説しています。
メゾサイクルとは
メゾサイクル(Mesocycle)は、いくつかのマイクロサイクルによって構成されたサイクルです。
目的や人によっても長さは異なりますが、4〜8週間程度であることが多いでしょう。
メゾサイクルでは、高ボリューム筋肥大重視にしたり低ボリュームにして筋力強化を狙ったりなど、目的を明確にする必要があります。※マクロサイクルの目的に基づく。
また、メゾサイクル内では基本的に種目を変更することはオススメできません。
身体が刺激に適応するまでには時間がかかりますが、その前に種目を変えてしまうとただ刺激を与えてるだけで、漸進性過負荷を与えられていない(もしくは管理できない)からです。
一方で前述した通り、同じ種目でも重量やセット数などを増やすことでマイクロサイクル毎に漸進性過負荷をかけていくことが重要です。
そして最後に、最終メゾサイクルではディロードを入れることも大事です。これは追い込んだ後に身体を回復させ、さらなる刺激へ身体をリセットするためです。
ディロードの記事はこちら
マクロサイクルとは
最後にマクロサイクルは、いくつかのメゾサイクルによって構成された最大単位のサイクルになります。
期間は16週間〜であることが多いです。
マクロサイクルは、ボディビルディングのコンテスト前プレップやパワーリフティングのピーキングなど、特別な目的を持ちます。
例えば「ベンチプレスのマックスを20kg更新する」がマクロサイクルのゴールの場合、それを基にメゾサイクルを組み立てていきます。
逆に言えば、マクロサイクルがはっきりしていないと、メゾサイクルも組み立てられません。当たり前ではありますが、何を目的にトレーニングしているのかを明確にしましょう。
トレーニングの適応は特異性(Specificity)が非常に強いです。身体は与えた刺激に対して適応するだけです。
極端な話ですが、ベンチプレスを強くなりたいのであれば、スクワットよりもベンチプレスをやった方が強くなりますよね。
実際には「背中と脚を強化するマクロサイクル」であったり「ベンチプレスを優先するマクロサイクル」であったりと差は縮まりますが、以前として適応したい方向に刺激を与えなければなりません。
「筋肥大」なのか「筋力」なのか、という簡単な決め方からでも問題はないので、マクロサイクルの目標を持つようにしましょう。
マクロサイクルのワンポイント
ついついトレーニングに励んでいると常に高ボリュームになりがちです。
恒常的に高ボリュームでやっていると関節系に疲労がたまるだけでなく(ディロードしていても)、身体の適応が鈍くなってしまいます。
それを避けるために、マクロサイクル内では一時的に低ボリュームのメゾサイクルも取り込んだ方が効果的でしょう。
ピリオダイゼーションの種類
サイクルに続いて、トレーニングメニューを構成する際はピリオダイゼーション(Periodization)も考慮する必要があります。
人によっては一切ピリオダイゼーションを採用しない場合もありますが、個人的には採用するべきだと考えます。漸進性過負荷を体系的にかけるためです。
一般的に以下の2種類のピリオダイゼーションが存在します。とはいえはっきりとこれらの形が採用されることは少なく、混ざっている場合が多いです。
- 線形ピリオダイゼーション
- 非線形ピリオダイゼーション(波状)
違いは非常に簡単で、線形ではサイクルの最初から最後まで綺麗に負荷を上げ続けるだけです。ベンチプレス 90kg→92.5kg→95kg...と同じ条件でどんどんレップ数や重量を増やします。
一方で非線形の場合は、日もしくは週毎にレップ数や重量に強弱をつけます。ベンチプレス 90kg 10レップ→95kg 5レップ→92.5kg 8レップ→97.5kg 4レップ...と変化します。
ピリオダイゼーションの重要なポイント
前述しましたが、上記2種類のピリオダイゼーションが綺麗に別れることはほとんどないですし、上手く行かない場合が多いです。
純粋な線形ピリオダイゼーションではすぐに限界に達してしまいます。一方で非線形モデルでも線形のように漸進性過負荷がなければ成長しません。
「一番効果のあるピリオダイゼーション」は存在しないのです。
重要な点は、どのようにこれらのピリオダイゼーションを採用して目的を達成するかです。
線形ピリオダイゼーション
人によって線形ピリオダイゼーションを採用できる期間が違います。単純に初心者と上級者では成長速度が違うからです。
- 初心者:セッション毎に漸進性過負荷をかけられる
- 中級者:マイクロサイクル毎に漸進性過負荷をかけられる
- 上級者:メゾサイクル毎に漸進性過負荷をかけられる
- エリート:マクロサイクル毎に漸進性過負荷をかけられる
「漸進性過負荷」は重量だと思ってもらって大丈夫です。初心者は筋トレする度にマックスが伸びてますが、上級者になると1ヶ月〜数ヶ月かかってしまいます。
初心者の場合は、シンプルな線形モデルで、ベンチプレス 3セット 10レップで毎回2.5kg増やせば問題ないでしょう。
中級者の場合は、それを週単位で行います。週2回以上の頻度の場合は、重い日と軽い日のような非線形モデルも採用することになるでしょう。
上級者の場合は、1メゾサイクルを終えてやっと次のサイクルで重量やボリュームを増やすというイメージです。
いずれにせよ、自分が伸びるタイミングに合わせてピリオダイゼーションを取り入れることが大事になります。
上級者がセッション毎にマックスが伸びる前提でメニューを作っても絶対に上手くいきません。逆も然りです。
非線形ピリオダイゼーション
非線形ピリオダイゼーションは、線形同様に経験や、トレーニング頻度なども考慮する必要があるでしょう。
一番多いパターンは、前述した重い日と軽い日に分ける例です。これがもっともシンプルな非線形ピリオダイゼーションとも言えます。
トレーニング頻度が週2回以上の場合は、毎回同じレップ数や重量ではなく変化させた方が、疲労が溜まりにくく精神的にもフレッシュな気持ちでトレーニングできます。
また、上級者などマイクロサイクル毎に重量を増やせない場合は、週毎の変化も必要かもしれません。
1週目にベンチプレス90kg 5レップ→2週目 92.5kg 4レップ→3週目 95kg 3レップ...のようにボリューム自体は落ちていき、次のメゾサイクルで2.5kg増やしてスタートするなどです。
個人的な感覚では、トレーニング歴が3年を超えたあたりからは上記のように週単位の非線形も採用しないと厳しいと思います。
トレーニングサイクルの組み方:参考例
それでは、実際にトレーニングメニューを作るようにプロセスを考えてみます。サイクルやピリオダイゼーションに加えて以下のような要素も考慮する必要があります。
- 特異性
- 種目の多様性
- 疲労
- トレーニング時期
トレーニング経験が2年くらいでビッグ3を伸ばしたいパワーリフターの15週間のオフシーズントレーニングという想定で進めましょう。
特異性は簡単です。パワーリフティングの種目であるスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの1RMを伸ばすことです。
トレーニング時期はオフシーズンであるため(試合直前ではない)、ある程度試合形式から離れて多様な種目を行えるでしょう。
疲労に関しては、経験2年のパワーリフターなのでそこまで身体が大きくなく強くもないと考えると、比較的高頻度で行っても平気だと考えられます。※強くて大きい人ほど、過負荷をかけるトレーニング頻度は落ちる傾向にあります。
それではマクロサイクルから考えます。
マクロサイクル:参考例
この方のマクロサイクルの目的は、以下のように設定してみます。
- 全体的な筋量の増加を優先する
- 1RMではなくベースとなる筋力を強化する(3〜5レップ)
比較的経験の浅いため、まだまだ筋量を増やすポテンシャルがあります。そのため15週間のうち10週間は筋肥大を重視した構成にします。
また、試合直前ではないためピーキングの必要はありません。筋量を増やした後は3〜5レップ程度の筋力強化を目指します。
ピーキングの解説はこちら
メゾサイクル:参考例
メゾサイクルは以下のように3つに分けます。
- 筋肥大メゾサイクル①:5週間
- 筋肥大メゾサイクル②:5週間
- 筋力メゾサイクル:5週間
1メゾサイクルは4週間+1週間ディロードとしています。
また、経験2年だと毎週マックスを更新することが難しいと思いますので、日単位とメゾサイクル単位で非線形ピリオダイゼーションを採用することになるでしょう。
スクワットを週2回やるとしたら、メゾサイクル①から②の1週目にかけては以下のようなイメージです。
1日目
スクワット: 3セット 6レップ 70%
2日目
ハイバースクワット:3セット 8レップ 65%
1日目
スクワット: 4セット 6レップ 72.5%
2日目
ハイバースクワット:4セット 8レップ 67.5%
1日目
スクワット: 4セット 6レップ 75%
2日目
ハイバースクワット:4セット 8レップ 70%
1日目
スクワット: 5セット 6レップ 77.5%
2日目
ハイバースクワット:5セット 8レップ 72.5%
1日目
スクワット: 3セット 4レップ 70%
2日目
ハイバースクワット:3セット 6レップ 65%
1日目
スクワット: 3セット 6レップ 72.5%
2日目
ハイバースクワット:3セット 8レップ 67.5%
メゾサイクル内ではマックスが更新されないという前提の元、最初の5週間を終えた後に一旦ボリュームは落ちて2.5%だけ強度をあげています。
最初のメゾサイクルでも重量やセット数を増やしていっていますが、あくまで元々の1RMは変化しないという点に注意してください。
初心者の場合は、セッション毎やマイクロサイクル毎にマックスが更新されるため、常に1RMの70%でやっても漸進性過負荷がかかることになります。
マイクロサイクル:参考例
最後にマイクロサイクルです。マイクロサイクルを考える上で、簡単にこの方の特徴をおさらいしましょう。
- オフシーズンのパワーリフター
- トレーニング経験2年
上記2点から、種目に多様性を持たせて、なおかつ比較的高頻度でトレーニングできると考えます。ベンチプレスは週3、スクワットとデッドリフトは週2にしましょう。
また、筋肥大重視のメゾサイクルではレップ数を高め(6〜10レップ)、筋力重視ではメイン種目のレップ数を落とします(3〜6レップ)。
%はあくまで目安です。1週目は2〜3レップ余裕がある程度で始め、4週目に0〜1レップの余力になるようにします。
スクワットやデッドリフトは毎週+5kg、ベンチプレスは毎週+2.5kg、その他補助種目は最低単位で重量を増やしましょう。
筋肥大重視のサイクルでは身体が許す限り毎週+1セットすると良いでしょう。筋力サイクルでは2週に一度増やすか、一切増やさなくてもいいかもしれません。
筋肥大重視のマイクロサイクル
ベンチプレス: 3セット 6レップ 70%
スクワット: 3セット 6レップ 70%
インクラインダンベルプレス:3セット 10レップ
ブルガリアンスクワット:3セット 10レップ
ダンベルカール:4セット 15レップ
ローププッシュダウン:4セット 15レップ
デッドリフト:3セット 6レップ 70%
荷重懸垂:3セット 6レップ
ケーブルロウ:3セット 10レップ
レッグカール:3セット 12レップ
サイドレイズ:4セット 15レップ
ハイバースクワット:3セット 8レップ 65%
ナローベンチプレス:3セット 10レップ
ランジ:3セット 10レップ
ハンマーカール:4セット 12レップ
スカルクラッシャー:4セット 12レップ
ロングポーズベンチプレス:3セット 6レップ 65%
ルーマニアンデッドリフト:3セット 8レップ 60%
ラットプルダウン:3セット 12レップ
ケーブルサイドレイズ:4セット 12レップ
ケーブルカール:1マイオレップセット 20レップスタート
プッシュダウン:1マイオレップセット 20レップスタート
※マイオレップ:1セット限界近くまで追い込んだ後、15〜30秒のレストで次のセットに入るのを4回繰り返す。ドロップセットのようなセットの組み方。1マイオレップセット=4セット追い込むということ。
筋力重視のメゾサイクル
ベンチプレス: 3セット 4レップ 77.5%
スクワット: 3セット 4レップ 77.5%
レッグプレス:3セット 10レップ
バーベルカール:4セット 12レップ
プッシュダウン:4セット 12レップ
デッドリフト:3セット 4レップ 75%
荷重懸垂:3セット 5レップ
バーベルロウ:3セット 10レップ
レッグカール:3セット 12レップ
サイドレイズ:4セット 12レップ
ポーズスクワット:3セット 6レップ 65%
ベンチプレス:3セット 6レップ 72.5%
ハンマーカール:4セット 10レップ
スカルクラッシャー:4セット 10レップ
ナローベンチプレス:3セット 5レップ 70%
ポーズデッドリフト:3セット 3レップ 70%
ラットプルダウン:3セット 10レップ
ケーブルサイドレイズ:4セット 12レップ
ダンベルカール:1マイオレップセット 15レップスタート
ケーブルプッシュダウン:1マイオレップセット 15レップスタート
トレーニングサイクルについて:まとめ
以上がトレーニングサイクルを組むにあたって必要な基礎知識になります。
筋トレ初心者の方にとっては少し大変かもしれませんが、このように体系的にトレーニグメニューを作ることが継続的に結果を出す鍵になります。
筋肥大が目的でも、筋力が目的でも、自分の今の状況や特徴を掴んでトレーニングを組んでいきましょう。
読んでいただきありがとうございました!