ピーキング:パワーリフティングの大会で自己ベストを更新する方法

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ピーキング:パワーリフティングの大会で自己ベストを更新する方法
本記事はStronger By Scienceの許可を得て、英語から翻訳しています。https://www.strongerbyscience.com/peaking-aka-how-to-hit-prs-in-meets/

ピーキングの方法:序論

「数週間前にジムで226kgあがったんだけど、大会の時は200kgが重く感じて、215kg失敗した。」

こんなことを言っている人を何回も見たことがありますよね。

それはピーキングが失敗したからです。また、ジムでの自己ベストしか大会であげられないのも、ピーキング失敗だと私は思います。

トレーニングプログラム作成が得意であれば、大会は自己ベスト更新だらけです。

このウェブサイトを今まで読んだことがない人へ。私はただ研究を読み漁ってるだけで実際にはトレーニングしていないオタクではないので安心してください。以下が直近2回の私のパワーリフティングの結果です。

2012年8月

ジムでの自己ベスト(試合と同条件)*:スクワット283kg、ベンチプレス 188kg、デッドリフト283kg

大会:スクワット294kg、ベンチプレス190kg、デッドリフト292kg

2013年5月

ジムでの自己ベスト(試合と同条件):スクワット328kg、ベンチプレス 190kg、デッドリフト306kg

大会:スクワット340kg、ベンチプレス192kg、デッドリフト322kg

*大会前にジムで2回ほど、もう少し高重量のベンチをあげられていました。また、2013年の試合の前にはストラップを使ってより高重量を引いていました。

私はローバースクワットをやるのですがローバーによって上腕二頭筋腱炎が悪化するため、実際の試合の状況と合わせるためにローバースクワット後のジム自己ベストのベンチプレスと、素手のデッドリフト自己ベストを記載しています。

特に上記の例で自慢をするつもりはありません。これがジムの自己ベストと試合のベストのあるべき姿なのです。

大会の時は、最低でもジムベストと一緒の記録、本来であれば全ての種目で自己ベストを更新できるはずです。

試合当日に体調を崩した・仕事で怪我をした・会場の空調がまったくなかった等、コントロールできないものを除き、上記以外の結果だとしたら、それは普段のトレーニングで試合と同様にできていないか(スクワットが浅い・ベンチをバウンドさせる・デッドリフトを反動であげる)、トレーニングプログラムが悪かったかのどちらかです。

「調子が悪かっただけ」なんて言い訳したくなるかもしれません。しかし本当にそうだったのでしょうか。ピーキングが上手く行かなかったんだと思います。それだけの話です。

それでは、ピーキングの決め手となる要因を調べていきましょう。

大会までのトレーニングボリューム

これは非常に重要です。こちらの記事で過去に説明したことがあります。

ピーキングの基礎 — ハードにトレーニングして、テーパリングをして、超回復して、そして試合当日により強くなる。

最初からハードにトレーニングしていなければ、ピーキングも何もありません。超回復が起きるほどのオーバーリーチがないからです。

※テーパリング:トレーニングボリュームを減少させること。
オーバーリーチ:回復できるレベルを超えたボリュームでトレーニングすること。

「ハードに」とは血管が飛び出そうな1RMや3RMのことではありません。しっかりボリュームのあるトレーニングを行うということです。

高強度(高重量)の刺激は神経系の適応を促しますが、この適応はかなりすぐに起こります。

一方でボリュームを増やすのは、オーバーリーチになると回復に数週間かかるほどの累積的な効果があります。

もし1週間に一度しかトレーニングしていなく、そのセッションで合計10レップ高重量でやって少し補助種目をやるレベルでは、テーパリングできるほどのボリュームを行えていません。

その状態でテーパリングすると、オーバーリーチからの超回復が起こりません。

高頻度トレーニングはこの問題を解決してくれます。1回のセッションあたりの負担を高めることなく、2〜3回のセッションに分けて高ボリュームを扱えるためです。

低頻度を好む場合は、試合に向けてしっかりボリュームをあげていくことを意識してください。テーパリングで効果を得るためにです。

テーパリングの期間

これもありがちな間違いです。テーパリングが長すぎる人と、短すぎる人に分かれます。

テーパリングが長すぎる場合

ウェストサイドの「遅延変異」メソッドに関する記事を読んで、3〜4週間にわたってボリュームを落とし、大会の1〜2週間前にピークが来てしまう人がいます。(ピークというものは短期間しか得られず、すぐにその後ディトレーニング状態になってしまいます。)

※ディトレーニング:トレーニング経験者がトレーニングをしないこと(またはボリュームが少ない)で筋量や筋力が以前より落ちてしまうこと。

500kgのスクワットを狙っていて1週間に12セッション入れているとしたら、3〜4週間レベルでテーパリングが必要かもしれません。

残りの99%の選手、特にノーギアの選手は、1週間ボリュームを減らした後にディロードを行えば十分です。

この方法で私は結果が出ています。もう1週間追い込まない期間を設けるかもしれませんが(トレーニング内容は同じで1〜2レップ減らす)、ディロード前に1週間しか意図的にボリュームを落としません。

経験上、2週間以上ボリュームを落とす意味があるほど強い選手は相当少ないです。

この期間中は、睡眠時間を最大限に取りましょう。10時間を狙い、少なくとも普段より1時間は多く寝たいです。

テーパリングが短すぎる場合

一方で、「ピーキング」がただ大会前に1〜2セッション休むだけと思っている人がいます。月曜日に第一試技の重量を行って、試合まで休み、土曜日に試合といった感じです。

これでは十分に休みが取れていません。(少し脳筋的になりますが、私の経験や多くの選手との会話をベースに話します。)

この場合は、身体がリカバリー態勢に入って鋭さを失うには十分な時間ですが、実際に高重量を上げたくてうずうずなるほどの時間ではありません。

肉体的な強さや攻撃的な精神が出てくるには足りない時間なのです。明日の戦いに備えたものの、夜中にいつの間に敵に襲われるようなものです。

しっかりと休む時間を取ってください。数ヶ月大会に向けて練習していれば、1週間軽くやってその後ディロードしたところで弱くなりません。

長期間積み重ねた筋力がそんなにすぐなくなると思いますか?自分の練習を信じてください。今までの努力に身体が応えてくれるように。

栄養的要因

大会前に減量する人へ

出来る限り早く体重を落として、すぐに体重を戻して下さい。大会の前日にゴミ袋を被って何時間もジョギングするのはダメです。

また、お風呂に入ってください。空気よりも水の方が熱伝導率が良いです。つまり、お風呂に入った方がすぐに身体が温まり、より汗をかきます。

パパっと体重を落としたら、スポーツドリンクと水を半々で入れたドリンクを7.5リットル飲みます。そのあとはビュッフェを食べましょう。

検量後の1〜2時間後には減量前よりも重くなっているはずです。減量に失敗して試合を台無しにしないようにしましょう。

検量が2時間前の場合

検量が2時間前の場合に水分抜きをするのであれば、体重の1〜3%以上の水分を失わないようにしてください。

それ以上減ると筋肉の静止膜電位や運動神経興奮性に影響してしまいます。

効率よく水分補給して失ったナトリウムやカリウムを取り戻したとしても、細胞内の電気化学的勾配が正常に戻るまでに2時間以上かかります。

検量が24時間前の場合

検量が24時間前の場合は、体重の5〜7%を落としても大丈夫です。中には10%落とす人もいます。

24時間前検量の場合でも、3%以上落とすのは危険ですし、オススメはしませんし、私は医者でもないですし、推奨しない理由はいくらでもあります。

しかしながらもしやる場合は、先ほどの数字(5〜7%)は一般的に達成できる数字です。5%はそこまで難しくもありません。10%はかなり厳しいです。

落とせるだけ脂肪を落として減量しましょう。水抜きは最終手段であるべきです。

水抜きの量が多ければ多いほど、精神的にも肉体的にもストレスが大きくなり、試合でのパフォーマンスに影響することを忘れないでください。

24時間前検量で検量が終わった後は、出来るだけ多く塩分とでんぷん質を含んだ食品を食べることで、アドバンテージになります。

高用量のカフェインも出力が向上するという根拠がありますが、カフェインの感受性がある人だけです。

私の場合は、コーヒーとモンスターをスクワット試技開始前に飲み、大会当日はあと4〜5本くらいカフェインを含んだドリンクを飲みます。重量が軽く感じ、素早くあげられます。

ピーキングの方法:まとめ

以上で全てです。ちょっとざっくりしすぎているところもありましたが、ここに記載している内容は、パワーリフティングの試合で自己ベストを安定して更新する基礎になります。

大会前のサイクルでしっかりボリュームを詰め込み、1〜2週間ボリュームを落としてその後1週間ディロード、減量する場合は水抜きをできる限り短期的に、炭水化物・塩分・水分を大量に摂取して、カフェインを上手く利用しましょう。

トレーニングプランを上手く設定する自信がなければ、競技を行っているコーチに依頼するか、大会で上手くいっている選手たちのトレーニング記録を見て学んでください。

大会当日は自己ベストを更新できるかどうか考えているべきではありません。どれくらい自己ベストを更新できるか、これが本来あるべき考えです。

もしこのトピックに興味があってより詳しく知りたい場合は、これら2つの素晴らしい記事をオススメします。

パワーリフティングのためのピーキングとして本サイト内に翻訳記事を掲載しております。

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