「ディロード」はまだ日本のトレーニング界では浸透していないように思いますが、長期的に筋肥大・筋力向上を狙うのであれば必須です。
冷静に考えれば、常に追い込むだけでなく身体を休ませる必要があるのは当然ですよね。
「休んだら筋肉が落ちる」と思う人もいるかもしれません。
しかし、研究ではディロードをしても筋肉量は落ちないと結果が出ています。*(1)
また、ディロードによってさらにトレーニングの刺激に身体が反応しやすくなる可能性もあります。
そんなディロードについて、研究の解説や具体的な方法、プログラムへの取り入れ方を紹介します。
ディロードとは?
そもそもディロード(Deload)と聞いても、何かパッとしない人も多いでしょう。
ディロードとは、意図的にトレーニングのボリュームや強度を落としたトレーニング(期間)のことです。
簡単に言うと休憩です。ディロードを行うことで筋肉や関節の回復だけでなく、精神的にもリラックスすることができます。
トレーニーは追い込むのが楽しみな人が多いのでつまらなく感じてしまいますが、長期的にはメリットが大きいものです。
筋トレとディロードに関する研究 *(1)
- 24週間トレーニングを実施
- 内容はベンチプレスを週3回
- 片方のグループはその内、3週間x2の計6週間トレーニングなし
- ベンチプレスのマックスにも筋肥大にもグループ間の変化なし
片方のグループは、6週間分トレーニングをせずとも、24週間続けてトレーニングしたグループと同じ結果を出しています。しかも重量を落としたとかでもなく、一切なしです。
トレーニング内容は上記の通り、ベンチプレスを週3回で3セットの10レップです。
また、ベンチプレスの重量は1RMの75%で、3週間ごとにもし12レップ出来ていたら重量を+5%しています。しっかり漸進性過負荷をかけられています。
実はディロード中に筋肉も筋力も低下している
注目すべき点としては、ディロード中に筋肉や筋力が落ちるものの、復帰後にすぐ元に戻るということです。
期間中の筋力と筋肉量の推移
上のグラフが上腕三頭筋の筋横断面積≒筋肉量、下のグラフが1RMの推移です。どちらもディロードグループは一時的に低下しますが、すぐにもう片方のグループに追いつくことがわかります。
少なくともこの研究では、一度休憩を挟んだ方がその後の伸び率が向上する、という結果になっているのです。
研究家兼トレーナーのBrad Schoenfeldのツイート
「休憩を挟んだ方が伸び率が高まる」事に関して、ブラッド・ショーエンフェルドは以下のようなツイートをしています。※トレーニング研究界の大物です。
Research from the lab of Sebastian Gehlert indicates that short breaks from resistance training “resensitizes” muscles for anabolism. Suggests a potential benefit to deloading strategies 💪🏽 #munichsymposium
— Brad Schoenfeld, PhD (@BradSchoenfeld) September 14, 2019
翻訳:「Sebastion Gehlertの研究室で行われた実験では、トレーニングからの一時的な休憩を取る事で、筋肉の筋肥大に対する感受性が高まる可能性がある、と示している。ディロードのメリットの可能性を示唆している。」
このツイートは2019年9月14日のものですので、研究も比較的最近かと思われます。(まだ確認できておらずすいません...)
先ほどの研究では、ディロード有無でも同じ結果でしたが、もしかするとディロードした方が長期的な筋トレには効果的なのかもしれません。
ちなみにこれは、身体が刺激になれてしまうために、ディロードを挟むと反応が良くなるものだと考えられています。アーノルド・シュワルツェネッガーが「Surprise the muscles」と言っていますが、それを科学が証明したんですね。
効果的なディロードの方法を考察
上記を踏まえて、3週間空けても、筋肥大や筋力には影響がないこともわかりました。これで安心して休める人も多いと思います。
しかし、何もやらないのではなく、1週間軽い重量や少なめのセットで行う方が効果的・現実的だと感じます。理由は以下の3つです。
- 次週の復帰が簡単
- 筋肉の低下を最低限に防ぐ
- そもそも皆トレーニングしたい
ディロードの最大の目的は身体を回復させ、さらに刺激への感度をあげることです。無理して必要以上に休まなくても大丈夫です。
やはり何かしら運動はした方が筋力が残るので、次の週もスムーズにトレーニングができます。身体を動かす事でアクティブレストにもなります。
また、最低限のボリューム=MVだけこなせば、筋肉量は維持できます。 身体の回復と筋肥大・筋力というゴールのバランスを上手く調整したいところです。
あとはやっぱりトレーニングしたいですからね。ただし、ディロード週に普段通りやってしまうのだけは気をつけてください。
※MVについては、マイクイズラテルのMEV・MAV・MRVトレーニングボリューム理論で解説しています。
Mike Israetelのディロード参考例 *(2)
マイク・イズラテルという海外のトレーナーは、後述する参考例をあげています。その際に重要な要素が2つです。
- ボリュームを通常の半分に減らす
- 週前半は強度を通常と同程度(後半は70%程度に抑える)
大胸筋トレーニングでのディロード参考例は以下のようになります。
ディロード前の週のトレーニング
種目 | セット | レップ | 重量kg |
---|---|---|---|
ベンチプレス | 4 | 8 | 100 |
フライ | 4 | 12 | 20 |
ディロード週のトレーニング
種目 | セット | レップ | 重量kg |
---|---|---|---|
ベンチプレス | 2 | 5 | 100 |
フライ | 2 | 6 | 20 |
見ての通り、重量は変えずにセット数をレップ数を約半分にしています。これは、強度ではなくボリュームが身体の疲労に繋がるからです。
そのため、たまに「ディロードだから低重量ハイレップ」のように行う方がいますが、これはNGです。逆に疲労が溜まってしまいます。種目を変えるのも刺激が変わるため基本NGになります。
また、週2回同じ部位をやる場合は、後半の方の強度を若干落とす(ディロード前の70%)ことをIsraetelはオススメしています。
現実的に筋トレにディロードを組み込む方法
それでは、実際にどのようなタイミングでディロードが有効でしょうか。現実的には以下のようなタイミングが挙げられます。
- 4週〜6週経ったらディロードと予め決めておく
- 旅行や仕事のスケジュールでトレーニングが出来ない週
- どうも調子が悪くなった週
まずオススメなのが、初めから4週間毎などにディロードを入れると決めてしまうことです。そうすることで疲労が溜まるのを防ぎ、怪我のリスクも落ち、停滞しにくくなります。
(ちなみにIsraetelは4週間毎を基本推奨しています)
また、仕事や旅行などで上手くトレーニング出来ない時は、ディロードにすると決めちゃいましょう。トレーニング出来ないとモヤモヤしちゃいますが、予め決めておけばスッキリします。
調子が悪い時も同様です。無理せず、その週はディロードにして次週絶好調で挑みましょう。疲労が原因で不調の可能性が高いです。
ディロードを含めどのようにトレーニングを構成していくかは、筋トレのサイクルの組み方を解説します【参考例あり】にて説明しています。
コツは思い切って休むこと
トレーニーは「休む」ことを悪だと考えがちです。しかし、身体は休みを必要としています。
定期的でもその日の判断でも良いので、休むタイミングをしっかり設けましょう。必ず長期的な成長に繋がります。
ちなみに「休む」に関連した話では、「睡眠時間が長い方が筋肥大に向いているかもしれない」研究結果があります。
筋トレとディロードについて:まとめ
ディロードについて、少しでも理解が深まっていたら嬉しいです。
研究結果からも見えている通り、休むことで長期的にマイナスになることは無いです。つまらないかもしれませんが、身体が回復する時期も用意しましょう。
以下、本記事のおさらいです。
- 24週間の実験では、途中6週間分トレーニングなしでも筋肥大や筋力に悪影響なし
- ディロードを挟むことで筋肥大に敏感になる可能性あり
- 休むときはしっかり休むことが大切
ちなみに自分も基本的には4週間トレーニングした後にディロードを入れるようにしています。追い込んだ後に1週間休めるので、トレーニングのリズムが掴みやすいと感じています。
人それぞれ違いはあると思うので、ぜひ試して調整してみてください。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献
- Ogasawara, Riki & Yasuda, Tomohiro & Ishii, Naokata & Abe, Takashi. (2012). Comparison of muscle hypertrophy following 6-month of continuous and periodic strength training. European journal of applied physiology. 113. 10.1007/s00421-012-2511-9.
- CHEST TRAINING TIPS FOR HYPERTROPHY by Dr. Mike Israetel, Co-founder and Chief Sport Scientist | Jan 30, 2017 (2019-10-16時点)