「限界まで追い込まないと大きくならない」って考えていませんか?
実は海外トレーニング界では、全セット追い込むことはタブー視されてきています。(Training to failureと言います。)
本記事では、どのような研究の根拠があるのか、トップコーチ達はどんなトレーニングを推奨しているのか、解説していきます。
筋トレで限界まで追い込むことに関する研究
限界までの筋トレと筋力に関するメタアナリシス *(1)
- 計8個の研究を参照
- 限界まで追い込まない方が筋力が向上
- 筋力最大化のためには限界までやる必要なし
こちらの研究では、上記の通り、限界まで追い込まない方が筋力が向上することがわかっています。
しかしながら、その差は統計的に優位性があるものの、ほとんど差がないと結論づけられています。(0.6〜1.3%の向上)
逆に言えば、筋力向上のためには限界まで追い込む必要がないことを示唆しています。
また、限界までトレーニングするなら、怪我やオーバートレーニングのリスクを考慮して取り組むべきとも述べられています。
少なくとも筋力狙いの場合は、潰れるまで追い込むなんてことはやらなくてよさそうです。
限界までの筋トレとボリューム・疲労に関する研究 *(2)
- 10RMのスクワットを4セット実施
- 片方のグループは20%速度が落ちた段階で終了(追い込まない)
- 両グループの合計レップ数に大きな差はなし
- 主観的疲労度は追い込むグループの方が強い
こちらでは、追い込む・追い込まないグループでのレップ数の違いや疲労度を研究しています。
その結果、両グループのレップ数に大差なし、疲労度は追い込んだ方が強いという結果です。※疲労度は主観的運動強度や主観的難易度など。
レップ数は挙上重量の合計であるボリュームに直結しています。
ボリュームが筋肥大に関係しているとわかっているため、ボリュームが変わらない以上、限界まで追い込むメリットがないです。*(3)
ボリュームと筋肥大に関する記事
レップ数と筋肥大の関係性に関しては、筋トレに効率的なレップ数は?筋肥大にレップ数は関係ない研究で解説しています。高レップでも低レップでもボリュームが同じであれば筋肥大も同じです。
追い込んだ場合はただ単に精神的により疲れてしまうだけ、ということです。
上記2つの研究結果から、筋力向上・筋肥大の両側面から見て、限界まで追い込む必要性は少ないということがわかります。
トップコーチは限界までの筋トレを推奨しない
海外の研究家やトップコーチたちの意見を聞いていると、やはり限界まで追い込むことがあまり推奨されていません。
しかしながら、だからといって楽なトレーニングいいとは限りません。
実際にどのような方法を推奨しているか著名コーチ2人の意見を確認してみましょう。
Brad Schoenfeldの推奨トレーニング方法 *(4)
研究家かつコーチングも行っているショーエンフェルドがこのトピックについて、推奨方法を論文にまとめています。
前提として、「2〜3レップ余力を残しても、限界まで追い込むのと同様の筋肥大が得られると考えられる」と述べられています。
その上で、限界まで追い込む場合は以下のような条件で行う方が良いかもしれないと示しています。
- 低重量
- アイソレーションやマシン種目
- 低頻度のトレーニングプログラム
- 特定の種目のみ
- 高齢者には推奨できない
やはり限界まで追い込むことによる疲労を考慮しなければいけないみたいです。1セットにこだわるのではなくて全体のトレーニングを意識した方がいいということですね。
また、低重量の場合は全ての筋肉を動員するために限界までやる必要があるかもしれないみたいです。高重量であればすぐに動員されるため関係なしとのこと。
ショーエンフェルドの教えだと、腕や肩のアイソレーション種目で追い込む、などが良いタイミングという感じでしょうか。
Mike Israetelの推奨トレーニング方法 *(5)
次にイズラテルの考えを紹介します。彼も博士でコーチングをやっています。ちなみにボディビルダー並みの身体を持っている博士です。
彼の考えを、超簡単にまとめてみると以下のようになります。
- 限界までトレーニグするの疲労が大きすぎる
- 3〜8週間で最後の週だけ追い込むなど負荷をあげていく
- 追い込んだ週の次週はディロードをする
- 限界までやることではなく漸進性過負荷が重要
基本的にはショーエンフェルドと同様に、疲労が大きすぎるため効率的ではないという考えです。フォームが崩れ怪我のリスクも高まります。
それに加え、漸進性過負荷を達成するために限界までの追い込みを取り入れるのは効果的と考えています。
そのためには、追い込んだ次の週にディロードで身体を回復させるべきとも述べています。
ディロードについての記事
ディロードのやり方やメリットは、筋トレとディロードの研究結果や効果的な方法【筋肥大の効率向上?】で解説しています。
また反対に、時間が限られている人は(20分しかないなど)限界まで追い込むことを推奨しています。疲労について気にする必要がないからです。
イズラテルのトレーニング理論についてはMike IsraetelのMEV・MAV・MRVトレーニングボリューム理論にまとめているので、ぜひ読んでみてください。
筋トレの追い込みに関する筆者の考え
以上が研究結果や海外トップコーチの推奨方法になります。これを基に、自分は以下のように取り組んでいます。
- 基本的に1〜3レップは余力を残す
- 腕や肩などアイソレーション種目の最終セットは追い込む
- ブロックの最終週は追い込む
- 追い込んだ次の週は必ずディロードをする
このルールを守るようにしてから、トレーニングのメリハリがついて調子が良くなっています。
やはり追い込みすぎると疲労がたまります。その時は気分がいいかもしれませんが、長期的に継続はできません。
ディロードを挟むことで身体が完全に回復できます。継続的なトレーニングには疲労の調整が必須だなと感じるばかりです。
疲労が溜まって怪我をしたり、セット数をこなせなくなることで筋肥大に悪影響が出てしまいます。
セット数についての記事
筋肥大に効果的な1週間のセット数については【最低10セット?】筋トレで筋肥大に必要なセット数についての研究と考察でまとめていますので、お時間のあるときにオススメです。
また、1日(1セッション)あたりのセット数については、筋トレで1日の最適なセット数は?【やり過ぎは良くない研究結果】で解説しています。
疲労からの回復ができなくなるため、1日に高セットを詰め込むのは推奨されていません。同様の論理が限界まで追い込むことにも適用できるでしょう。
筋トレで限界まで追い込むことに関して;まとめ
結論として、限界まで追い込むのは特定の種目やセットなど、限られた条件下にした方が良さそうです。
全セットで追い込むと疲労がたまって、継続的ではないからです。長期的な視点で考える必要がありそうですね。
以下に本記事に内容を簡単にまとめました。
- 筋肥大最大化のために追い込む必要はない
- 追い込まない方が筋力が向上するかもしれない
- 追い込むと疲労が大きいため、継続的ではない
- 追い込む場合は種目や頻度を考慮する
- 1週間追い込む場合は次週でディロードを入れる
毎セット潰れるまで追い込む、というようなことはオールドスクールな考えになってきました。
追い込むタイミングをうまく調整して、継続的に身体に負荷をかけながら、回復できるメニューに取り組みましょう。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献
- Effect of Training Leading to Repetition Failure on Muscular Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis Davies, T., Orr, R., Halaki, M. et al. Sports Med (2016) 46: 487.
- Resistance Training Performed to Failure or Not to Failure Results in Similar Total Volume, but With Different Fatigue and Discomfort Levels Santos, Wanderson Divino Nilo dos1; Vieira, Carlos A.1; Bottaro, Martim2; Nunes, Vitória A.1; Ramirez-Campillo, Rodrigo3; Steele, James4; Fisher, James P.4; Gentil, Paulo1 The Journal of Strength & Conditioning Research: January 04, 2019
- Effects of Different Volume-Equated Resistance Training Loading Strategies on Muscular Adaptations in Well-Trained Men Brad Schoenfeld;Nicholas Ratamess;Mark Peterson;Bret Contreras;G. Sonmez;Brent Alvar; Journal of Strength and Conditioning Research. 28(10):2909–2918, OCTOBER 2014
- Does Training to Failure Maximize Muscle Hypertrophy? Schoenfeld, Brad Jon PhD, CSCS, FNSCA1; Grgic, Jozo MS2 Strength & Conditioning Journal: October 2019
- Mike Isratel's facebook post on training to failure. (2019-10-21時点)