トレーニングについて記事やユーチューブで情報収集していると、あるとこでは少ないセット数がいいと言っていて、一方では沢山やった方がいいと書かれていて、訳がわからないですよね。
人によって差が出る理由は、その人にとって効果的だったセット数が違ったり、そもそも競技がボディビルやパワーリフティング、スポーツの補強だったりでバラバラだからです。
本記事では、トレーニング科学の研究ではどのような結果が出ているのか、そしてそれらを基に著名研究家やトレーナーはどのようなセット数を推奨しているのかを説明していきます。
※セット数については、筋トレのセット数を科学的に考察【1日・1週間あたりのボリューム】で全てまとめています。
筋肥大とセット数に関する研究
それでは、トレーニングのセット数と筋肥大の関係性の研究について見ていきましょう。
①1セットと複数セットを比較したメタアナリシス *(1)
- セット数の影響を比較した8個の研究を参照したメタアナリシス
- 2-3セットおよび4-6セットの方が1セットよりも筋肥大が大きい
- セット数が伸びるにつれ、効果が高まる傾向
- 1セットよりも複数セットの方が40%筋肥大の効果が高い(初心者でも経験者でも)
まず最初に、1回のトレーニングセッション内で1セットと複数セットを比較した研究です。
当たり前に思えるかもしれませんが、1セットよりも複数セットの方が筋肥大の効果が大きいことがわかりました。
さらに、セット数が増えるにつれ(6セットまで)、その効果が大きくなる傾向も見つかっています。
とりあえず「1セット追い込めば十分」という考えはあまり適切ではなさそうです。
②1週間のセット数と筋肥大に関するメタアナリシス *(2)
- 15個の研究を参照したメタアナリシス
- 1セット増える毎に筋肥大の結果がよくなる傾向
- 5未満、5〜9、10以上で比較した時も、多い方が筋肥大に良い結果
次に、1セッションではなく1週間単位で見た際のメタアナリシスです。
この研究により、1週間あたりで見てもセット数が多い方が結果がよくなることがわかりました。
また、少なくとも週に10セット(部位あたり)はやらないと筋肥大を最大化できないだろう、と考察で述べられています。
③1,3,5セットのトレーニングを比較した研究 *(3)
- 1種目1、3、5セットのグループに分けて全身の様々な種目を実施
- 筋力や筋持久力にはグループ毎の差はなし。
- 筋肥大は、セット数が増えるにつれて効果が大きかった。
こちらの研究は上記3グループに分けた上で、1週間に3セッションを8週間続けた研究です。なお、被験者はトレーニング経験者です。
こちらの研究では、上半身が6〜30セット、下半身が9〜45セットとかなり広い幅で比較されています。(下記表参照)
1種目5セットのグループは下半身を1週間で45セットと物凄いセット数ですが、それでもオーバートレーニングにならず、筋肥大は向上しています。
グループ | 上半身/週 | 下半身/週 |
---|---|---|
1種目1セット | 6セット | 9セット |
1種目3セット | 18セット | 27セット |
1種目5セット | 30セット | 45セット |
研究家やトレーナーの推奨セット数
それでは、この研究結果を基に、ボディビルのトレーナーたちはどれくらいのセット数を推奨しているのでしょうか。
いくつかの例を見ていきましょう。
Brad Schoenfeldの推奨セット数
上記の研究にも参加しているBrad Schoenfeldは、研究家でもありトレーナーでもあります。
筋肥大を目的としたトレーニングに関して、彼のポイントをまとめると以下のようになります。*(4)
- まずは週10セットでスタートすると良い
- セット数を時期によって変化させることにメリットもあるかもしれない
- 高セットで行い続けるとオーバートレーニングに繋がる可能性がある
- 反応をよくする・回復するために低セットの時期もあるべき
少なくとも筋肥大の最大化には10セット必要だと考え、10セットでスタートし、時期によって増やしたり減らしたり、という考え方です。
また、セット数が多い時期にはトレーニング頻度を増やしてセット数を分けることを推奨しています。
※筋肥大とトレーニング頻度については、筋トレの頻度は筋肥大に関係ない研究【重要なのはボリューム】 で解説しています。
Mike Israetelの推奨セット数
Mike Israetelは、MEV(最低効果的ボリューム)・MAV(最大適応ボリューム)・MRV(最大回復ボリューム)という概念をトレーニング界に広めていることで有名な研究家かつトレーナーです。
彼の推奨するセット数の決め方は以下の通りです。*(5)
- MEVからMRV(部位別だが平均すると10〜20セット程度)で徐々に増やしていく
- 頻度は1.5回〜6回に分けて行うべき
- レップ数は平均して8〜20レップ
- 潰れる4〜1レップ手前で全て終了する
彼もセット数としてはSchoenfeldと大体同じくらいですが、特徴的なのはMEVからMRVに向けて毎週セット数を増やしていくべきと述べている点です。
詳しくは以下で紹介する記事にて解説していますが、彼の考えは「漸進性過負荷を与えるために、毎週ボリュームを増やさないといけない」ということです。
レップ数や重量を増やすのは簡単ではないため、セット数でコントロールしていくということですね。(もちろん重量も増やしていくのですが )
ちなみに彼の仕組みでは、毎週増やして大体5週目あたりにディロード、6週目は10セットに戻すといった感じです。
Mike Israetelのトレーニング理論
Eric Helmsの推奨セット数
Eric Helmsは著書「The Muscle and Strength Pyramid : Training」にて以下のように書いています。*(6)
- セッション別、部位毎に40〜70レップ
- 1週間あたり部位毎に80〜210レップ
- 頻度は2〜3回に分ける
最低でも週に80レップと考えると、単純に1セット10レップ計算で8セットということになります。あまり他の2人とも変わらない数字です。
また、参考になるなと思った一文があったので、抜粋します。
最大のセット数ではなく伸びる最小限のセット数を行う。停滞した時にしっかり回復できているのであれば、セット数を増やす。
筆者訳
要は、伸びていればそのセット数で十分で、伸びなくなったらセット数を増やせばいい、という話です。漸進性過負荷をシンプルに捉えて、変にトレーニングを変えていくなというメッセージを感じます。
筋肥大に効果的なセット数に関する筆者の考察
以上を踏まえて、私としては以下のようにセット数を決めれば問題ないと感じます。
- 1セッションあたり最低3セット(部位毎)
- 1週間あたり最低10セット(部位毎)
- 停滞した時、または追い込みたい時期にセット数を増やす
- もしくはIsraetel式に毎週セット数を増やしてディロードして減らす
やはり1週間で10セットというのは守るべきかなと思います。その上で、停滞したら増やしたり、Israetelの推奨のように週単位で増やしていくべきです。
少なくとも、闇雲に伸びない気がするからセット数を増やすのはやめた方がいいと思います。怪我に繋がるだけでなく、身体が高セットに慣れることで、余計高セットをしないと伸びなくなるかもしれません。
少ないセットで効果が出ればそれに越したことはないはずです。「いかに増やせるか」よりも「いかに減らせるか」で考えた方が長期的には伸びるのではないかと個人的に思います。
トレーニングサイクルの作り方
筋肥大とセット数:まとめ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!筋肥大とセット数の関係についてまとめると、以下のようになります。
- 1セッションあたりセット数が多い方(6まで)が筋肥大に繋がる(部位毎)
- 筋肥大を最大化するためには少なくとも1週間10セット必要(部位毎)
- 常に10セットではなく時期によって増やす必要もありそう
- セット数に応じてトレーニング頻度も増やしていくべき
今回は筋肥大とセット数の関係性に的を絞った話でしたが、セット数だけでなく重量やトレーニング頻度も重要になってきます。
また、セット数について詳しく学びたい方は、筋トレのセット数を科学的に考察【1日・1週間あたりのボリューム】 もぜひ読んでみてください。
またよろしくお願いします!
参考文献
- Single vs. multiple sets of resistance exercise for muscle hypertrophy: a meta-analysis.
- Dose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis.
- Resistance Training Volume Enhances Muscle Hypertrophy but Not Strength in Trained Men
- Evidence-Based Guidelines for Resistance Training Volume to Maximize Muscle Hypertrophy
- TRAINING VOLUME LANDMARKS FOR MUSCLE GROWTH (2019-09-23時点)
- The Muscle and Strength Pyramid : Training