クレアチン、特にクレアチンモノハイドレートはスポーツサプリメントの中でも科学的根拠が非常にしっかりしているサプリメントです。
すでにその効果や摂取方法を知っている人が多いと思いますが、改めてまとめてみたいと思います。
クレアチンのメカニズム
クレアチンは、主に肝臓でアミノ酸から合成される天然物質です。
「瞬発力に効く」など聞いたことがあると思いますが、クレアチンはATP-クレアチンリン酸系の経路でATPの合成を助けます。
上記図の左にあるように、エネルギー産生が最も大きい経路になります。
クレアチンは、エネルギー産生時にATPがADPに変換された後、ADPにリン酸を与えることでATPに戻してくれます。(体内にクレアチンリン酸として存在)
つまり、クレアチンをサプリメントとして摂取して、クレアチンリン酸の貯蔵を増やせば、このATP-クレアチンリン酸系をサポートできるのです。
クレアチンの研究と効果
ISSNのクレアチンに関する見解 *(1)
クレアチンは冒頭で述べた通り、効能に関して最も科学的根拠があるスポーツサプリメントです。以下、国際スポーツ栄養学会(ISSN)がレビューに記載しているものです。
クレアチンモノハイドレートは、トレーニング中の高強度運動の能力や除脂肪体重の向上といった点において、現時点で最も臨床的有用性のあるエルゴジェニックサプリメントです。
ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
ISSNはクレアチンを「効能を支持するための根拠が強く、安全」と分類しています。このグループには、他にプロテインやカフェイン、炭水化物、スポーツドリンクといったサプリメントの基本中の基本のものが含まれています。
※個人的にはHMBが同グループに入っているのが気になりますが...本記事では特に触れません。
また、クレアチンにはクレアチンモノハイドレート、クレアチンHCLといった種類が存在していますが、それについても言及されています。
現時点では、筋肉中へのクレアチン取り込み、高強度運動の能力向上という観点でのサプリメントにおいて、クレアチンモノハイドレートが最も研究され臨床的に効果がある種類です。
ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
要は、クレアチンはモノハイドレートを選べば間違いなしです。その方が安いですし、他の種類にするメリットもないでしょう。
クレアチンの筋力への効果 *(3)
- クレアチン vs プラシーボ
- 1,3,10RM伸び率:20% vs 12%
- レップ数伸び率:26% vs 12%
皆さん筋力の効果はご存知だと思いますが、上記の通り(平均値です)、筋力もレップ数もクレアチンを取ることで伸びます。
これによりボリュームが増えることになるので、必然的に筋肥大にも効果があると考えられます。
トレーニングボリュームと筋肥大
クレアチンの筋肥大への効果 *(4)
- 大学アメフト選手24人を対象とした研究
- 8週間クレアチンを摂取(vsカーボのみ or クレアチン+カーボ)
- クレアチン群は除脂肪体重+3.9%
- カーボ群は除脂肪体重-0.4%
本研究では除脂肪体重だけでなく、ベンチプレス・100yダッシュ・垂直跳びも計測されていますが、どれもクレアチン摂取によって有意に向上しています。
クレアチンによって除脂肪体重が伸びているのも、上記のパフォーマンス向上によって、トレーニングの負荷が高まるからでしょう。
「クレアチンは試合前に摂れば良い」と考える方もいますが、常に摂取することで筋肥大が促進され、長期的に見ると大きな差になる可能性があります。
そのため、個人的にはオフ期間は設けない方が良いと思います。
クレアチンの摂取量と飲み方
※以下、クレアチンモノハイドレートを摂取する前提で説明します。
摂取量
クレアチンモノハイドレートは、1日3〜5g摂取していれば、しっかりと効果が現れます。
体重から計算したい場合は、1kgあたり0.03gを摂取しましょう(5)。体重100kgで3gとなります。
また、クレアチンが効果を出すメカニズムを思い出してください。ATP-クレアチンリン酸系でのエネルギー再合成サポートです。
そのためには、体内のクレアチンリン酸貯蔵量を常に増やしておく必要があります。従って、毎日摂取すると良いでしょう。
摂取タイミング
クレアチン摂取は体内に貯めることが目的であり、カフェインのように飲んですぐに効果が出るわけではありません。
そのため、基本的にはどんなタイミングで摂取しても良いでしょう。
しかしながら、クレアチンの吸収が高まるトレーニング後や食後が推奨されることもあります。
クレアチンをトレーニング前後の摂取で比較した研究では、トレーニング後に摂取した方が除脂肪体重と筋力に効果的かもしれない、という考察がされています。(6)
結論として、一般トレーニーにおいて4週間クレアチンを摂取する場合、トレーニング前に比べてトレーニング後の摂取の方が、除脂肪体重と筋力に優れた結果をもたらすかもしれない。
とはいえ、研究に参加したのが19名とサンプル数も小さく、あくまで個人差の影響が出たのかもしれません。
なので基本的に摂取タイミングは気にしなくて良いと思いますが、最善を求める方はトレーニング後に徹底すると良いでしょう。
ローディングは必要か
クレアチンでよくある質問は「ローディングしなければいけないか」です。
結論から言うと、「ローディングは必要ない」です。
ローディングは一般的に、20g程度を1日4回などに分けて摂取するのを、5日間前後続けます。
これで何が達成できるかと言うと、体内に素早くクレアチンが貯蔵される、それだけです。
つまり、すぐにクレアチンの効果が欲しい人はローディングすべきです。例えば試合を控えている人とかですね。
何も気にしていなく、ただ単にクレアチンを取り始めるだけであれば、ローディングの必要はありません。
トレーニングしない日は飲むべきか
現実的に考えると、トレーニングしない日でもする日でも、毎日5g摂取してしまうのが簡単です。
厳密に言えば、クレアチンが毎日そこまで消費される可能性は低いと思われますが、クレアチンモノハイドレートは非常に安価です。
まずは毎日摂取を基本として、忘れてしまってもそんなに気にしない、くらいで良いと思います。
クレアチンに副作用はあるか
クレアチンの副作用として考えられる点は以下の通りです。
- つりやすくなる
- 体重が増える
- ハゲる?
1と2は、共通した1つの要因から起こります。クレアチンによって筋肉中の水分が増えるためです。
これは単純に浸透圧の問題で、要はクレアチンが入った分だけ濃くなるので、薄めるために水分が入っていきます。
これによって必要な水分量がクレアチンを摂っていない時よりも増えるため、注意していないと足がつりやすくなったりするかもしれません。
また、当然ながら水分量が増えると言うことは、そのまま体重も増えます。なので階級制競技の選手は、試合前にクレアチンを取り始める場合は気をつけましょう。
3つ目の副作用は、あくまで僅かな可能性ですが、かなり興味深いです。というか、事実であって欲しくないです。
どうやら過去に1つだけ、クレアチン摂取が間接的に脱毛を促進するということを示す研究があったみたいです。(7)
クレアチンを摂取している人が実際に脱毛を経験したわけではなく、DHTという脱毛の要因となるアンドロゲンを増加させた、という研究結果です。
しかし、クレアチンが直接的に脱毛を促進させるというデータはなく、上記のようなデータも1つしかないため、気にしなくていいと思われます。
クレアチンの効果・反応がないノンレスポンダー
その効果がほぼ間違いなく保証されているクレアチンモノハイドレートですが、実はノンレスポンダーという、効果がない人も世の中にはいることがわかっています。
要因は、元々遺伝的にクレアチン貯蔵量が多かったり、食事からのクレアチン摂取量が多かったりということが考えられます。
人口の20〜30%はこのノンレスポンダーだとも考えられており(5)、クレアチンを一定期間摂ってみて体重の変化も挙上重量の変化もない場合は、ノンレスポンダーの可能性があるためクレアチンが要らないかもしれません。
オススメのクレアチン
クレアチンを選び時に気にする要素は2つだけです。
- クレアチンモノハイドレートを選ぶ
- グラム単価が安い物を選ぶ
本当にそれだけです。メーカーによって溶けやすさやインフォームドチョイスなどといった要素は変わりますが、効果も含有率も変わりません。
クレアチンモノハイドレートで十分
繰り返しになりますが、クレアチンの種類で悩んだら(悩まなくていいですが)、クレアチンモノハイドレートを選んでください。
データも豊富で、安くて、デメリットがないです。
クレアチンの新たな種類であるクレアチンクレアアルカリンやクレアチンエチルエステルは、価格が一般的に高いにも関わらず、クレアチンモノハイドレートよりも優れているとは証明されていません。
クレアチンの効果:まとめ
以上がクレアチンに関しての簡単なまとめになります。
伝えたかった内容は、以下の通りです。
- クレアチンモノハイドレートで十分
- 無条件に毎日5g飲む
- ハゲません。多分。
EAAやBCAA、HMBなんかに手を出す前に、ちゃんとクレアチンを飲んでください。
クレアチンは間違いなくトレーニーに欠かせないサプリメントの1種でしょう。
参考文献
- ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations
- 1-3.筋肉を動かすエネルギー源 - DNSZONE
- Rawson, Eric S. and Jeff S Volek. “Effects of creatine supplementation and resistance training on muscle strength and weightlifting performance.” Journal of strength and conditioning research 17 4 (2003): 822-31 .
- Stout, Jeffrey & Eckerson, Joan & Noonan, Deb & Moore, Geri & Cullen, Diane. (1999). Effects of 8 weeks of creatine supplementation on exercise performance and fat-free weight in football players during training. Nutrition Research. 19. 217-225. 10.1016/S0271-5317(98)00185-7.
- EVERYTHING YOU NEED TO KNOW ABOUT CREATINE by Tiago Vasconcelos - Renaissance Periodization
- Antonio, J., Ciccone, V. The effects of pre versus post workout supplementation of creatine monohydrate on body composition and strength. J Int Soc Sports Nutr 10, 36 (2013).
- Does creatine cause hair loss? - Examine.com
- Iraki, Juma et al. “Nutrition Recommendations for Bodybuilders in the Off-Season: A Narrative Review.” Sports (Basel, Switzerland) vol. 7,7 154. 26 Jun. 2019