マイオレップス(Myo-reps)は、一般的な方法よりも短時間で同様の効果を得られるトレーニング方法です。
嘘っぽく聞こえるかもしれませんが、個人的にマイオレップスは非常に便利だと思います。
忙しい社会人でもパワーリフターでも部活生でも活用できるマイオレップスについて、概要や使用方法を説明したいと思います。
※英語を読める方には、考案者ボーグ・ファーガリ本人の記事やEブックをお勧めします。
マイオレップスとは?
マイオレップス(Myo-reps)とは、ノルウェーのボーグ・ファーガリ(Borge Fagerli)によって考案されたトレーニング方法です。
いわゆるレストポーズ法の1種で、レップ間(マイオレップスの場合はセット間という考えですが)にいくらか休憩を取り、次のレップを行うというものです。
マイオレップスは、レップ間で短い休憩をとる、もしくは数レップを何回も行う、一種の「レストポーズ」トレーニングです。
マイオレップスの特徴は、重量を一切変えずに、僅かな休憩時間で次のセットを始めるという点です。
利点やメリット
以下のようなメリットがあり、トレーニングプログラムに採用されることがあります。
- 時間を短縮できる
- 低重量で追い込めるので関節組織に優しい
つまり、普通にトレーニングするのと同程度、もしくはそれ以上の効果を、より効率的(時間や努力の観点)に得られると主張されています。
ボーグ・ファーガリの考え
簡単に、本トレーニング方法の考案者であるファーガリがどのようにマイオレップスに辿り着いたのか見てみましょう。
そもそも筋肥大には「機械的負荷」、つまり挙上重量が重要ではありますが、低重量であっても出力が最大まで近づけば、高重量と同様に筋肥大を引き起こします。
例えば5レップでも20レップでも、限界まで(1レップも残さず)行えば、筋肥大は変わらないということです。
筋肥大とレップ数の関係
マイオレップスの考えは、低重量でもこの限界近くを維持して行ってしまえば、常に効果的なレップレンジでトレーニングできるのではないか、というものです。
また、マイオレップスには加圧トレーニング的な要素も存在します。
バンドなどを身体に巻きつけなくとも、筋肉が収縮することで血流が抑えられるためです。休憩時間が短いことで、通常のトレーニングと比べて血流が減少します。
この加圧的な効果を最大化させるためには、ロックアウトを避けるべきだとファーガリは述べています。
マイオレップスの方法
概要
最初にマイオレップスの1セットの例を紹介します。
- 1セット目:20レップ (アクティベーションセットと呼びます)
- 2セット目:5レップ
- 3セット目:5レップ
- 4セット目:5レップ
- 5セット目:5レップ
マイオレップスの最初は、15〜30レップ程度できる重量で1レップ残すくらいまで追い込みます。
その後、5〜15秒間(深呼吸3〜5回)休憩し、次のセットを3〜5レップ行います。
これを最大5セット続けます。それ以上になると筋持久力のトレーニングとなってくるため、筋肥大を求める場合にはお勧めしないそうです。
この5セットをマイオレップス1セットとしてカウントするため、注意しましょう。
ボーグ・ファーガリのアドバイス
基礎的なトレーニングテクニックが必要
マイオレップスでは限界近くギリギリまであげ(1レップ残す程度)、少し休憩を挟みます。
しかし、トレーニング経験がない場合、どこが上げられなくなるタイミングか分かりません。
そのため、少なくとも3ヶ月程度はトレーニング経験があって、限界まで上げる感覚が分かるべき、とファーガリは説明しています。
低重量で高重量と同様の筋肥大を得るためには限界近くまで追い込まなければいけませんが、1レップ余力を残すことで、効果は変わらずに、疲労が抑えられて回復が早まるからです。
※疲労が抑えられるということは、筋肥大に最重要なボリュームをより多く稼げるということを意味します。
マイオレップス1セットは通常の3〜4セットに相当する
3セット20RMの通常セットと比較すると、理論上マイオレップセットは70%エフェクティブレップが多くなり(筋繊維出力が最大となるレップ)、時間も半分以下となるそうです。
それに加え、彼の経験上マイオレップ1セットは通常の3〜4セット分に匹敵するということで、トレーニングプログラムに取り組む際はこの点を考慮した方が良いでしょう。
マイオレップスの効果と研究
理論上は使えそうなマイオレップスですが、科学的根拠によって支持されているのでしょうか。
残念ながらマイオレップスを直接調査した研究は見つけられなかったのですが、レストポーズやレスト時間について見ていきたいと思います。
レストポーズセットの研究 *(3)
- 通常セットとレストポーズセットのグループを比較
- トレーニングは6週間週4で全身実施
- 1RMに差はなし
- 筋肥大に差はなし。大腿部のみレストポーズが有意に高かった
マイオレップスではありませんが、20秒休憩するレストポーズと通常セットを比較した研究です。
1RMの80%を両グループ18レップ行っています。通常セットでは3セット6レップで、セット間に2〜3分の休憩です。レストポーズは1セット目に限界までやって18レップになるまで20秒休憩しながらです。
この結果、1RMや筋肥大に有意差は見られなかったとなっています。それどころか、レストポーズの方が大腿が筋肥大しています。
とはいえ、ただ単に「慣れていなかったから」レストポーズで筋肥大を起こしやすかった可能性もあるので、レストポーズが勝ちかはわかりません。
研究者が以下のように述べているように、トレーニング時間を短縮できるため、効率をよくしたい、時間がない人には向いているかもしれません。
筋持久力と筋肥大、時間効率を最大化を優先するのであれば、伝統的な複数セットではなく、レストポーズ法を用いるべきである。
レストが短い方が筋肥大しやすいのではないか?
「でもセット間休憩は、身体が回復するまで長くとった方が筋肥大に効果的じゃないの?」と思う人もいるでしょう。
もちろんそうです。そのようなデータも存在しています。*(4)
しかしながら、そういった研究はあくまで1〜2分と3〜5分を比較している点に注意しましょう。
上記レストポーズの場合は20秒で、マイオレップスの推奨も15秒以下です。
おそらく1〜2分休憩すると、中途半端に身体が回復してある程度レップはこなせるけれど、神経系の疲労によりエフェクティブレップ数が少なくなってしまうことが、主な違いかと思います。
レストポーズの場合は、ほとんど身体が休まらないため、実質的にそのままエフェクティブレップを継続できるのだと想像します。というか、これがファーガリの考えていることです。
レストポーズの代謝への効果 *(5)
- 通常セットとレストポーズセットのグループを比較
- レストポーズの方が、22時間後の安静時エネルギー消費量が高かった
こちらもマイオレップスではなくレストポーズ(20秒)と通常セット(1〜2分)を比較しています。
その結果、安静時エネルギー消費量が15%ほど上がっています。
そのため、減量したい人にはもしかするとレストポーズの方が効果的かもしれません。
トレーニングプログラムへの使い方
筆者の使い方
マイオレップスは個人的にも好んで使っており、以下のようなタイミングで重宝しています。
- 何らかの事情で時間がない
- ビッグ3で疲れ果てている時
- アイソレーション種目の刺激を変えたい時
やはり一番大きなメリットは、「時間が短縮できる」ことかと思います。10分やっても3分やっても同じであれば、私は短い方がいいです。(ジムが好きな人は10分かけたいかもしれませんが)
また、私はパワーリフティングが好きなのでどんな日でも基本的にビッグ3もしくはそのバリエーションを行っていますが、それだけで精神的にも肉体的にも疲労することが多いです。特に低レップの多い筋力重視のブロックでは。
そんな時でも3分程度ならやる気が出ます。たかがアイソレーション種目でもこのセットをやるやらないで、長期的な差が出ると思います。
時短というメリット以外にも、純粋に刺激が変わるとも思えます。
加圧トレーニング的な刺激も入るため、アイソレーション種目の選択肢が減ってきた時や、停滞した時には1〜2サイクル取り組んでみるのも良いでしょう。
プログラムの注意点
マイオレップスは従来のやり方とは少し違うので、セット数や負荷の増やし方、種目の選び方を少し気をつけなければいけません。
まず、前述した通り、マイオレップス1セットは通常の3〜4セットに相当します。そのため、今まで3セットやっていたら、マイオレップス1セットに変えることができます。
また、マイオレップスで重量を増やす際は、狙ったレップレンジの上限を達した際にしましょう。
例えば、アクティベーションセットが20〜25レップで設定されている場合、25レップを達成したら+2.5kgする、といった感じです。
マイオレップスの種目に関しては、ファーガリは以下のように述べています。
マイオレップスはアイソレーション種目やケーブル、マシンなど、少ない筋群を鍛える種目との相性が最も良いです。
想像してみたらわかるとは思います。ダンベルカールなどアイソレーション種目では非常にやりやすく安全ですが、スクワットやデッドリフトでは怪我のリスクがありますし、そもそもやる気が出ません。(少なくとも私は)
個人的にはビッグ3を始めとしたフリーウェイトのコンパウンド種目は避けるべきだと思いますが、中にはハイレップスクワットが好きな方もいる?とは思いますので、判断にお任せします。
基本的には、アイソレーションで行うのが最も理にかなっているでしょう。(トレーニングプログラムへの組み込み方を考慮しても)
トレーニングサイクルの組み方
マイオレップス:まとめ
以上がマイオレップスの概要や効果、使用方法についてです。
忙しい中短時間でトレーニングしなければいけない方、ビッグ3に集中したいパワーリフター、ボリュームを稼ぎたい/刺激を変えたいボディビルダーなど、様々な方が利用できる非常に良いテクニックだと思います。
あくまで、基本的なセット構成をベースにしつつも、臨機応変にマイオレップスに取り組んでみるといいでしょう。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献
- Myo-reps: the secret norwegian method to build lean muscle in 70% less time - Borge A. Fagerli
- Myo-reps – a time-efficient method for maximum muscle growth - Borge Fagerli
- Prestes, Jonato & Tibana, Ramires & da Cunha Nascimento, Dahan & Rocha, Pollyanna & Camarço, Nathalia & Sousa, Nuno & Willardson, Jeffrey. (2017). Strength And Muscular Adaptations Following 6 Weeks Of Rest-Pause Versus Traditional Multiple-Sets Resistance Training In Trained Subjects. The Journal of Strength and Conditioning Research. 33 Suppl 1. 10.1519/JSC.0000000000001923.
- Do short rest periods help or hinder muscle growth? - Chris Beardsley
- Paoli A, Moro T, Marcolin G, et al. High-Intensity Interval Resistance Training (HIRT) influences resting energy expenditure and respiratory ratio in non-dieting individuals. J Transl Med. 2012;10:237. Published 2012 Nov 24. doi:10.1186/1479-5876-10-237