今回紹介するプログラムは、パワーリフティングの中でもスクワットやベンチプレスに使用されることが多い、スモロフjrです。
後述しますが、スモロフjrは昔から広まっているプログラムで、4週間という短期間詰め込み型なところが特徴的です。
4週間で爆伸びする人もいれば、死亡する人もいるスモロフjrの内容やメリット・デメリットを説明していきたいと思います。
※13週間あるスモロフ本家の方は、スモロフプログラムの内容と評価【13週間スクワットプログラム】で解説しています。
スモロフjrの概要
スモロフjrは、スモロフプログラムの一部を抜粋・変更したプログラムです。
元々のスモロフプログラムはスクワット用の13週間のプログラムで、2001年にパベル・ツァトーリンが広めたみたいです。*(1)
プログラム自体は、ロシアのスポーツ科学者セルゲイ・スモロフによって書かれており、1989年に公開されているようです。(ロシア語文献をGoogle翻訳しているので確かではありません。)
13週間あるスモロフの方は、以下のような構成になっています。
- レスト/メンテナンス
- 導入:2週間
- 基礎:4週間
- 転換:2週間
- 高強度:4週間
- ピーキング/テーパリング:1週間
この中の3番目である「基礎」の期間が、スモロフjrの期間になります。
このブロックによって、軽量級の場合は5〜7.5kg、一般的には10〜30kg向上させられると説明されています。*(3)
それではスモロフjrの中身を見ていきましょう。
スモロフjrプログラム
前述した通り、スモロフjrはスモロフプログラムの一部を切り抜いたプログラムです。
元々のスモロフプログラムにおける「基礎」フェイズは、4週間で以下のような内容になっています。
スモロフ(13週間)の基礎フェイズ
1週目 | |||
---|---|---|---|
月 | 4セット | 9レップ | 70% |
水 | 5セット | 7レップ | 75% |
金 | 7セット | 5レップ | 80% |
土 | 10セット | 3レップ | 85% |
2週目 | |||
月 | 4セット | 9レップ | 70% + 10kg |
水 | 5セット | 7レップ | 75% + 10kg |
金 | 7セット | 5レップ | 80% + 10kg |
土 | 10セット | 3レップ | 85% + 10kg |
3週目 | |||
月 | 4セット | 9レップ | 70% + 15kg |
水 | 5セット | 7レップ | 75% + 15kg |
金 | 7セット | 5レップ | 80% + 15kg |
土 | 10セット | 3レップ | 85% + 15kg |
4週目 | |||
月 | 休み | ||
水 | 休み | ||
金 | 休み | ||
土 | 1RMテスト |
このように、週4回と高頻度、さらに高ボリュームでスクワットを行います。
スモロフjrの全体像
スモロフjrは、この基礎フェイズプログラムのセット数・レップ数に若干変更が加えられています。
1週目 | |||
---|---|---|---|
月 | 6セット | 6レップ | 70% |
水 | 7セット | 5レップ | 75% |
金 | 8セット | 4レップ | 80% |
土 | 10セット | 3レップ | 85% |
2週目 | |||
月 | 6セット | 6レップ | 70% + 10kg |
水 | 7セット | 5レップ | 75% + 10kg |
金 | 8セット | 4レップ | 80% + 10kg |
土 | 10セット | 3レップ | 85% + 10kg |
3週目 | |||
月 | 6セット | 6レップ | 70% + 15kg |
水 | 7セット | 5レップ | 75% + 15kg |
金 | 8セット | 4レップ | 80% + 15kg |
土 | 10セット | 3レップ | 85% + 15kg |
4週目 | |||
月 | 休み | ||
水 | 休み | ||
金 | 休み | ||
土 | 1RMテスト |
ボリューム・強度
ご覧の通り、依然として高頻度・高ボリュームです。しかし、1セットあたりのレップ数は低くなっています。
レップ数を低くすることで競技形式に近づくため、1RM向上に最適化(スモロフと比べて若干だとは思いますが)されています。
種目のバリエーション
週4回という高頻度でありながらも、バリエーションは想定されていません。週4回全て競技形式の スクワット(もしくはベンチプレス)になります。
スモロフjrのメリット・長所
シンプルながらもインパクトのあるスモロフjrですが、さすがに長い間広まっているだけあり、しっかりとした長所があります。
- 高ボリューム
- 特異性(レップ数・強度)
特異性が高く、かつ高ボリューム
説明するまでもないかもしれませんが、スモロフjrの最大のメリットは、「競技形式でひたすらやり込める」ことです。
ボリュームが多いほど筋肥大にも筋力の向上にも良いです。それを競技形式の種目で行えば、練習としては最適でしょう。
プログラムがシンプルすぎて最早説明することがあまりありません。
ボリュームや頻度についてはこちら
スモロフjrのデメリット・短所
プログラムを目にした時点で察する人も多いかと思います。スモロフjrの短所は、以下の通りです。
- オーバートレーニングのリスク
オーバートレーニング
スモロフjrは意図的にオーバートレーニングさせる超高ボリューム高頻度のプログラムです。
さらに種目もバリエーションがなく、練習になる反面、すぐに疲労も蓄積されます。
機能的オーバーリーチングといって、MRV(最大回復ボリューム)を超えさせた後にディロード(スモロフjrの場合4週目の休み)で回復させ、パフォーマンスを向上させる方法です。
上手くいけばハッピーエンディングですが、怪我のリスクが高まったり、他の種目に悪影響が出たり、下手すると伸びるどころか筋力が落ちるかもしれません。
短期間で詰め込んでいて大きな成長が期待できる反面、それだけリスクも大きいプログラムです。
MRVとは?
考察
スモロフjrについて率直に書くと、「あえて採用する必要があるのか」と感じます。
もちろん、高ボリュームや高頻度でトレーニングすることでパワーリフティング的には結果が早く出てくると思います。
しかし、1ヶ月無理をしたところで周りより圧倒的に強くなれる訳でもありません。
ここまで無理をしないトレーニングでも「それなりに」成長できると考えると、あまりメリットがないように思えてしまいます。
逆に言えば、本当に何もかも試したのにどうにもならない人は、一度試してみてもいいのかもしれません。もしかすると、超高ボリュームが適している可能性もあります。
いずれにせよ、スモロフjrのことを知ったからといって、すぐに手を出すべきプログラムではないでしょう。
注意点
とはいっても魅力的なプログラムです。(私もやってみたくなります)プログラム実施時には、以下の点に注意してみましょう。
- 実施する際は、スクワット・ベンチプレスどちらかに必ず絞る。(高ボリュームのデッドリフトに耐えられる人は、デッドリフトでもいいと思います。)
- 通常行っている補助種目や、他のビッグ3はボリュームを1/2〜2/3に抑える。MV・MEVあたりが良いでしょう。(MV・MEVについてはこちら)
- 1サイクルで終わりにしましょう。結果が出なくても、2サイクル連続は望ましくないです。
- 1RMテスト終了後も1週間ディロードを取ってから、通常のトレーニングに戻りましょう。(ディロードについてはこちら)
- また、オーバーリーチングさせる性質上、疲労が抜けずに4週目には結果が見えてこない可能性も考えられます。
以上が、スモロフjrプログラムについてのまとめと考察になります。
チャレンジ精神旺盛の方は、ぜひ試してみてください。一般の方には、もっと健全なTSAのプログラムなどをオススメします。
スモロフjrだけではなく、スモロフ本家(13週間)が気になる方は、以下の記事を読んでみてください。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献