ベンチプレスとフライはどちらの方が胸筋に効果的なのか?【研究考察】

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ベンチプレスとフライはどちらの方が胸筋に効果的なのか?【研究考察】
本記事はMenno Henselmansの許可を得て、英語から翻訳しています。https://mennohenselmans.com/bench-press-vs-flys/

序論

大胸筋を鍛えるには、ベンチプレスとフライのどちらが良いのでしょうか?

Solstadらの新しい研究では、バーベルベンチプレスとダンベルフライにおける大胸筋、三角筋前部、上腕三頭筋の筋活動を比較しました。

多くの筋電図(EMG)研究とは異なり、この研究の方法は適切でした。両グループとも6RMを実施し、5レップ目でそれぞれの動作の様々な部位を観察しました。

ほとんどの筋電図研究は、異なる種目の相対的強度を一致させなかったり、限界近くまで追い込んだ時の結果を確認しないため、実質的に無意味です。

今回の研究結果の予想がつきますか?

Barbell-bench-press-vs-dumbbell-flys

ベンチプレスvsフライの研究結果

大胸筋を含む全ての筋群での平均筋活動において、ベンチプレスがフライよりも良い結果となっています。データは下記をご覧ください。

フライの方が上腕二頭筋をより刺激しています。興味深いことに、フライによる上腕二頭筋の活動は筋肥大を促すのに十分なレベルでした。

しかし、どんなフライにも当てはまるとは思いません。

上記画像でフライのフォームを見ると、肘を曲げ、手のひらを天井に向け、肩は外旋しているのがわかります。

このフォームでは上腕二頭筋のアイソメトリック収縮が相当強くなるでしょう。

Barbell-bench-press-vs-dumbbell-flys-EMG-muscle-activity
訳註:黒がベンチプレス、白がフライの筋活動。左より、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋、三角筋前部の結果を示しています。

研究結果の考察

じゃあこれでお終いですね。フライは使えなくて、ベンチプレスの方が全てにおいて効果的でしょう?

いいえ、筋電図のデータはそのように解釈するべきではありません。

ベンチプレスとフライの筋活動の違いは、動作の上部3分の1、つまりベンチプレスの場合はまだ胸筋に効果があり、フライの場合にはない部分から来ています。下記データを確認してみてください。

バイオメカニクス的には非常に理にかなっています。ダンベルを使うことで、外部モーメントアーム(文字通り"腕"を水平にした長さ)はボトムポジションで最大となり、大きなストレッチがかかります。

しかしながら、トップポジションでは肩の水平屈曲/内転への外部モーメントアームが存在しないため、実質的に負荷がかかっていないです。

つまり、ベンチプレスの方がより広範囲の可動域にわたって大胸筋を鍛えるということです。

ほとんどの研究では、より広い可動域でトレーニングした方が、筋肥大が刺激されると示されています。この理由はおそらく2点ありますが、今回関係しているのはその内1つだけです。

第一に、最大可動域でトレーニングするとストレッチ起因の筋肥大を刺激できます。

しかしながら、実際にはベンチプレスよりもフライの方が大胸筋をストレッチさせています。胸よりも下にバーベルを下ろせないため、バーベルベンチプレスでは最大限に大胸筋をストレッチさせることは難しいです。

そのため、私はバーベルよりもダンベルを好むことが多いです。

この点に関しては、フライの方がベンチプレスより優っているでしょう。

2点目に、筋繊維毎に異なる長さ-張力関係を持つため、筋肉に長さによってそれぞれの筋繊維にかかるテンションは異なります。

言い換えると、可動域の中でもポイントによって刺激している筋繊維が少し異なるということです。

可動域の大部分を無視すると、一部の筋繊維への刺激が足りなくなってしまいます。

この点に関しては、研究が示すように、ダンベルフライよりもベンチプレスの方が決定的に優位です。

多くの人が、フライは常に負荷がかからないために化学的ストレスが減ってしまうと主張することも想像できます。

しかしながら、大半の研究において化学的ストレス単体では筋肥大を引き起こさないと示されているため、その主張は関係ないと考えています。

ではダンベルフライはやるべきなのでしょうか?私のクライアントには基本的にやらせていません。

その代わりに、ケーブルフライを正しく行うことで、怪我のリスクを抑えながらもストレッチと全可動域のテンションという両方のメリットを得られます。

ベイジアンフライという種目で、詳しいやり方やメリットについてはこちらの記事で確認できます。

Pecs-EMG-activity-barbell-bench-press-vs-flys
訳註:大胸筋の筋活動。左がエキセントリック、右がコンセントリック時の活動を示しています。コンセントリックの上部動作(黒い棒グラフ)を見ると、ベンチプレスの方が活動が大きいことがわかります。

そのほかに興味深い点は、上腕三頭筋の活動パターンです。

パワーリフターの多くは、上腕三頭筋が最もアクティブになるのはトップポジションだと主張しています。そのため、上腕三頭筋を強くするためによくブロックプレスが使われます。

しかしながら、2つの理由からこれは見当違いに思います。

初めに、以前示したように、上腕三頭筋がトップポジションでもっとアクティブになるというのはそもそも事実とは異なります。下記データを確認してみてください。

ベンチプレスの動作において、上腕三頭筋の活動は比較的一定です。トップポジションの方が圧倒的に活動的と考えるバイオメカニクス的な根拠も特にありません。

(もしトップポジションに過負荷をかけたいのであれば、ブロックプレスで可動域を狭めてもトップで必ず減速する必要があるため、バンドかチェーンを使うべきです。)

Triceps-EMG-activity-barbell-bench-press
訳註:上腕三頭筋の筋活動。左がエキセントリック、右がコンセントリック時の活動を示しています。

2点目に、そもそもベンチプレスはどんなバリエーションであれ、上腕三頭筋に最適な種目ではないです。

以前、「ベンチプレスは胸筋に比べて上腕三頭筋を成長させないと多くの研究結果で示されている」というレビューを投稿しました。

筋肉の成長スピードを他の種目と比較していなかったため、多くの人があくまで一定の条件下による根拠だと考えた一方で、最近の研究により理論が確認できました。

ベンチプレスは上腕三頭筋の長頭を効果的に刺激せず、トライセップスエクステンションは刺激するということです。

長頭は二関節筋で、肘の伸展だけでなく、肩の伸展にも関わります。

ベンチプレス中は、長頭を最大限に収縮させることで有意な肩関節伸展モーメントを生み出します。

肩関節屈曲モーメントは肘関節伸展モーメントよりも限定的である可能性が高いため、上腕三頭筋の長頭を最大限に収縮するのは望ましくないです。

まとめ

全体としては、この研究はベンチプレスの大きな勝利に思え、ベンチプレスは立派なコンパウンド種目であるものの、大胸筋(ストレッチ起因の刺激が最大化できない)や三角筋(可動域の50%未満)、上腕三頭筋(長頭への刺激不足)のどれにも完璧な種目ではないでしょう。

それぞれの筋肉を最適に刺激するためには、ターゲットした種目を取り入れるべきです。

参考文献

  1. Tom Erik Solstad, Vidar Andersen, Matthew Shaw, Erlend Mogstad Hoel, Andreas Vonheim, Atle Hole Saeterbakken. (2020) A Comparison of Muscle Activation between Barbell Bench Press and Dumbbell Flyes in Resistance-Trained Males. Journal of Sports Science and Medicine (19), 645 – 651.

Menno Henselmansは、データに基づいたメソッドによって理想の身体を得られるようにトレーニーをサポートしています。

Menno Henselmans

Menno Henselmans

国際演説者、科学者、そしてオンラインフィジークコーチであるメノ・ヘンセルマンズ(Menno Henselmans)は、データに基づいたメソッドによって理想の身体を得られるようにトレーニーをサポートしています。ぜひ彼のFacebookInstagramTwitterをフォローし、またウェブサイトにて無料のメールコースに登録してみてください。

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