序論
MurphyとKoehlerによるメタアナリシス(2021)で、増量と比較して、減量では筋肥大は減少するものの、筋力向上に関しては変化がないと示されました。
この結果は、私の経験と一致しています。
クライアントの大半は減量中も筋力が向上し続け、筋力のデータだけを見ると本当にカロリー不足の状態なのか判断が難しいくらいです。
減量中は筋肥大が確実に難しくなります。
とはいえ、エネルギー収支が筋肥大にもたらす影響を過剰に考え過ぎている人は多く、その影響でエネルギー過剰でないと筋肥大できないと思い込まれてしまっています。
今回の分析では、複数の研究において、減量中にも筋肥大が確認されています。
エネルギー不足でも筋肥大を起こせることは明らかですが、当然ながら増量している時と比べるとその度合いは一般的に小さくなってしまいます。
ちなみに、500カロリー不足している場合、筋肥大の平均的効果量が0.16(有意ではない)まで減少しました。
しかし、この結果は少なくとも50%の人はいくらか筋肉を増やしたということを示しています。もちろんこの状況下では適切なトレーニングプログラムが重要になってきます。
年齢と性別の影響
年齢の違いは、筋肥大の度合いに有意な影響をもたらしませんでした。
この結果は、「年齢の筋肥大や筋力向上への影響は、少なくとも65歳程度までは一般的に考えられるよりもはるかに小さい」という過去の記事と一致しています。
しかしながら、ネガティブな影響がある傾向は見られました。
性別に関しても、筋肥大の度合いに有意な影響をもたらしませんでした。
性別以外の条件を同じにすると、男性も女性も同様な筋肉の成長率が見られました。
この点に関しては、女性の筋肉ポテンシャルに関する私の記事を読んでいれば、驚くことではないでしょう。
筋力 vs 筋肉のサイズ
筋力向上は、特に短期間の場合、多くで神経筋システムや脳の神経上達に影響されています。
新たなハードウェアを作るよいうよりはソフトウェアのアップデートのようなものであるため、これらの適応はおそらくエネルギー収支による影響がないでしょう。
しかしながら、長期的に筋肉の成長が不足した場合は、論理的に考えると筋力向上の度合いが落ちることを意味するでしょう。
また、疲労回復能力が乏しくなり疲労が増えるために、筋力が向上しにくくなるかもしれません。
BMI
このメタアナリシスでは、BMIが筋肥大に対してネガティブに、有意な影響を持っていると示されました。
つまり、BMIが高い人は筋肉を増やしにくい傾向があるという意味です。
具体的には、BMIが1ポイント増えるごとに、81カロリー減らすのと同じレベルで筋肥大が減少しました。
年齢と比較した場合、BMIが1ポイント増えるごとに、最大5年ほど年上の状態と同じ筋肥大になっています。
最近のレビューで結論づけられた、またNuckolsやTrexlerと以前討論したように、肥満状態の人はアナボリック抵抗があるからかもしれません。
しかしながら今回のケースでは、筋肉が多い人は既に高度なレベルにいるために、筋肉を増やしにくいと意味しているのかもしれません。
おそらくどちらも当てはまるでしょう。
結論
全体として、エネルギー不足な状態ではほぼ確実に筋肥大を減少させますが、その影響はそこまで大きなものではなく、多くの人はエネルギー不足でも筋肉を増やすのは可能でしょう。
また、筋力向上に関してはエネルギー不足でも問題なく実現できるはずです。
私から見て重要だと感じた点は、減量中にもし筋力が向上していないのであれば、筋肉を失っている可能性が高いということです。
筋力が向上してないのは、神経系ではポジティブな適応が起きているものの、筋肉の減少によってその適応がかき消されていると考えられるからです。
参考文献