高炭水化物での増量に対する弁護論

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高炭水化物での増量に対する弁護論
本記事はRenaissance Periodizationの許可を得て、英語から翻訳しています。https://renaissanceperiodization.com/case-high-carb-massing/

序論

本記事は、出来る限り筋肉を増やすことについて書いています。それ以外の情報を探しているのであれば、すいません。しかし最適な筋肥大の方法を詳しく学びたい方は、ぜひ読み続けてください!

基本的に、筋肥大は3つの非常に基礎的なことをやるだけです。1つ目は、ハードにトレーニングすることです。興味がある方は、こちらに多くの情報を掲載していますので、読んでみてください。

2つ目は、高カロリーの食事をすることです。つまり、実際に増量できるように、消費カロリーよりも多くのカロリーを摂取できる食事を継続的にとるということになります。

3つ目に、たんぱく質を十分に摂取することです。ウェイトトレーニングとともにタンパク質を摂取することで、余分なカロリーが脂肪ではなく筋肉になってくれます。

ただ単に体重を増やすだけであれば難しくないのですが(世界中で何百万人もがすでにやっています)、筋肉を増やすのはもっと難しいです。


これらの基礎的なことに努めれば、筋肉は増やせます。しかしながら本記事のトピックはこれらを行って筋肉を「増やせるか」ではなく、細かいところを詰めていっていかに筋肉を「多く増やすか」(脂肪と比べて)という点です。

そして今回注目するのは、マクロ栄養素の比率と、それによる筋肉と脂肪増加比率への影響です。複雑に聞こえますが、基本的な部分は非常に単純です。

第一に、無条件でたんぱく質は十分量摂取しなければいけません。そのため体重1kgあたり2.2g程度を取れば筋肥大をほとんど最適化できるでしょう。

これより多くたんぱく質を摂取して、1日の摂取カロリーの内のたんぱく質比率を上げてもいいでしょうか?

もちろん大丈夫です。しかしながら、余剰なたんぱく質摂取は欠点が2つあります。

1つ目に、マクロ栄養素の中で一番お金がかかるということです。

2つ目は、たんぱく質は空腹を抑える効果があるため、たんぱく質摂取量を増やすと十分にカロリーを摂取するのが一気に難しくなります。大抵の人はカロリーを摂取できなくなります。


体重1kgあたり2.2gを目標にする方が話が簡単になるので、本記事のトピックは「長期的に最低限の脂肪で最大限筋肉を増やすためには、炭水化物と脂質の比率はどれくらいがベストなのか」になります。

明言しておきますが、これは非常に細かい点で、大きな影響があることではありません。

前述した基礎的な3つを行っていれば、ほぼ間違いなく筋肉は増やせます。

また、炭水化物と脂質の比率によって、筋肉と脂肪が増える比率が著しく変わるということもないでしょう。

しかしながら、長期的に見ると若干の差が積み重なるため、結果を最大化させたい方にとっては、細かい点を知っておくことも重要です。


本トピックを解説していくにあたり、3種類の増量食を仮定します。

1つ目は、「余剰脂質」食です。十分な炭水化物摂取はパフォーマンスや筋肥大に必要不可欠であるため、このような食事の場合は最初に炭水化物必要量(トレーニングボリュームや運動量を基にした)に合わせます。

例えば、運動量が多く、1日2時間トレーニングしている91kgの人の場合、少なくとも1日400gは炭水化物を摂取できる食事がいいかもしれません。

しかしながら、たんぱく質と炭水化物400gのカロリーを足しただけでは、高カロリーにはなりません。

余剰カロリーを生み出すために、「余剰脂質」食では、目標のカロリーと「たんぱく質+炭水化物」の差分だけ脂質で補います。

上記の例では、4,000カロリーを達成するために1日175gほどの脂質を摂取することになるでしょう。

この食事方法ではハードにトレーニングできるように必要な炭水化物量を最初に定め、その後に目標値まで脂質を足していきます。

筋肉増量に使える2つ目の食事方法は、低炭水化物・高脂質食です。

この食事では、炭水化物摂取量を適切な範囲で最低限に抑え(体重1kgあたり0.6〜0.7g程度かそれ以下を、一般的に何かの食材に付随される形で摂取します)、余剰カロリーを生み出すために大量の脂質を取り入れます。

4,000カロリー必要な91kgの人の例では1日あたりたんぱく質を200g、炭水化物は60gのみ、そして脂質はなんと330gも摂取することになります。

3つ目に考えられる食事方法は、高炭水化物・低脂質食です。

この食事では、脂質摂取量をホルモンや基本的な身体の機能が保てるレベルで最低限に抑え(体重1kgあたり0.6〜0.7g)、たんぱく質を除く残りのカロリーは炭水化物で埋めます。

同様の例では、1日あたりたんぱく質を200g、炭水化物を655g、脂質を60g摂って4,000カロリーの到達します。


残念ながら初心者以外を対象とした、こういった食事の違いを比較した研究はほとんど存在していません。そのため、生理学的な理論や間接的な研究を頼りにすることになります。

それぞれの食事方法の利点と欠点を書き出して、それらの研究や生理学的理論を確認してきましょう。上手くいけば、脂肪を最低限に抑えながら筋肥大を最大化させるためには、どういうバランスが最適なのかが理解できます。

余剰脂質での増量

余剰脂質の利点

「余剰脂質」の方法で増量することによる明確な利点が2つ存在します。

1.) 高カロリーを摂取しやすい

もし好きな食事トップ10を並べるとしたら、ほとんどの場合「余剰脂質」増量食のマクロ栄養素に簡単に当てはまるでしょう。

脂質と炭水化物を一緒に摂取していいため、どんな美味しい食べ物もこの食事に取り入れることができ、高カロリー摂取が非常に簡単になります。

考えてみてください。チーズケーキ、ハンバーガー、ピザ、アイスクリーム、他にもいくらでもあります。これらは大体同じくらいの脂質と炭水化物を含有しています。他の増量方法では取り入れられないでしょう。

2.) 食事の選択肢が一番多い

「余剰脂質」食における食べ物は最も美味しいだけではなく、食事の選択肢が他の食事方法と比べてマクロ栄養素により制限されません。

たんぱく質をそれなりに摂取している限り、友人と出かけている時、旅行中、仕事中、もしくは家で料理を作る時も、超低炭水化物や超低脂質食材を探さなくて大丈夫です。

制限が少ないため、「余剰脂質」食は、一般的な食事を制限する準備ができていないけれど、筋肥大を求めている人に非常に向いています。

余剰脂質の欠点

「余剰脂質」の方法で増量することによる明確な欠点が2つ存在します。

1.) 高炭水化物による効果を得られない

余剰カロリーを生み出すために脂質摂取量を増やすと、高炭水化物によって得られる様々な利点が失われることになります。

詳細は後述しますが、確実に欠点になり得るでしょう。

2.) 脂肪が増える

余剰カロリーが脂質によって生み出されるため、余剰脂質食では継続的に消化(リンパ)器官から血流へ多くの脂質が流れることになります。

後述しますが、残念ながら余剰な脂質は筋肥大の燃料として使われることはなく、簡単に脂肪として貯蔵されてしまいます。つまり、余剰脂質食は他の方法と比較して脂肪が増える可能性があるということです。

低炭水化物・高脂質での増量

低炭水化物・高脂質の利点

低炭水化物・高脂質の方法で増量することによる明確な利点が3つ存在します。

1.) 脂質で高カロリーを摂取しやすい

脂質は簡単に摂取でき、美味しく、1グラムあたりのカロリーも多いです(たんぱく質や炭水化物の2倍以上)。

つまり高脂質食であれば高カロリーを摂取するのもめちゃくちゃ大変な訳ではありません。

2.) 食事量が少なくなる

脂質にはカロリーが詰まっているため、高炭水化物食に比べて、目標カロリーに達するために実際に食べなければいけない量が圧倒的に少ないです。

増量が長期間続き食事が面倒になって、食欲が一切無くなってきた時には非常に助かります。

3.) 健康的な脂質や健康状態

何かしらの栄養素を過剰摂取すると、少しは健康状態も悪化します。筋肉でも脂肪でも、増量自体は長生きの方法ではないことは事実です。

それを考慮した上で、マクロ栄養素の内、脂質は過剰摂取した場合に最も健康被害が少ないと思われます。

詳しく言うと、オメガ3やナッツやナッツ系バター、アボカド、オリーブオイル、カノーラオイルに含まれる一不飽和脂肪といった健康的な脂質は、過剰摂取した際にマクロ栄養素の中でネガティブな影響が最も小さいです。

増量をしたいけれど健康第一という場合は、主に一不飽和脂肪を摂取すると良いでしょう。

低炭水化物・高脂質の欠点

低炭水化物・高脂質の方法で増量することによる明確な欠点が6つ存在します。

1.) 高カロリー食では低炭水化物が難しい

理論上は低炭水化物・高脂質で増量することも可能ですが、実際には難しく思えます。

カロリーに一切制限をかけずケトジェニック食(超低炭水化物)にすると、ほとんどの人はメンテナンスカロリーよりも少ないカロリー摂取になってしまいます。

低炭水化物食を大量に食べるのはかなり強い意志が必要なため、炭水化物と脂質を混合させた「余剰脂質」に比べると低脂質で増量するのも難しいですが、低炭水化物で増量するのはさらに難しいです。

2.) 健康的な脂質 vs 増量

数多くの研究において、健康的な脂質は満腹感が強いため増量しづらくなってしまうということがわかっています。

例えばアーモンドの場合、いくら食べてもいいとなっていても、増量を促進しないと示されています。なぜでしょうか?

アーモンドをそのままどれくらい食べれますか?そんなに大した量ではありません。

しかしその量でどれくらい満腹感があるでしょうか?ある条件下では、摂取カロリーと同レベルの満足感だと思われます。

そのため主に健康的な脂質を摂取して増量しようとしている場合は、大変になるでしょう。

詳しくはこちら:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12074256

3.) 簡単に脂肪として貯蔵される

摂取した脂質が脂肪として貯蔵される前に、どのように変化するでしょうか?一切変化しません。既に脂質として身体に入るため貯蔵しやすいのです。

脂質に比べると、炭水化物や特にたんぱく質の場合は、エネルギー消費が高く、また単純に可能性が低い、かなりの生化学的変化を必要とします。

だとすると余剰カロリーが全て炭水化物やたんぱく質の場合は脂肪が増えないのでしょうか?そうではありませんが、少し脂肪増加が抑えられるということです。

つまり余剰カロリーが全て脂質の場合は、摂取カロリーあたりの脂肪増加割合が一番高くなってしまいます。

4.) インスリンが少なくなる

インスリンは脂肪蓄積を促進するでしょうか?もちろんです。しかし同様に筋肥大も大いに促進します。

低炭水化物の場合、インスリンが低下し、筋肉増加の大部分が減少してしまいます。

高脂質・低炭水化物では、インスリンによる筋肉成長が少なくなる一方で、高脂質摂取によって脂肪増加が最大になるため、全然良い組み合わせではないのです。

5.) トレーニングのエネルギーが少なくなる

筋肥大を引き起こすためには、ハードな高ボリュームトレーニングが必須であることを思い出してください。

低炭水化物では、そのようなトレーニングのためのエネルギーが低下します。それによって筋肥大の可能性も低下してしまうでしょう。

6.) グリコーゲンが少なくなる

筋肉に含まれるグリコーゲンが多いと、それだけで細胞内の筋肥大経路が活性化され促進されます。

高グリコーゲンでトレーニングもしくは生活しているだけで、時間当たりの筋肥大が大きくなるのです。

グリコーゲン生成に必要な炭水化物が食事にほとんど含まれない場合は、筋肥大の効果も薄れてしまいます。

詳しくはこちら:https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/1550-2783-10-5

高炭水化物・低脂質の増量

高炭水化物・低脂質の利点

高炭水化物・低脂質の方法で増量することによる明確な利点が7つ存在します。

1.) インスリンによる筋肥大促進

インスリンはアナボリズムにおいて非常に大きな役割を果たします。

トレーニング後の魔法のようなインスリン時間帯はあまりありませんが、一日中(そして数週間、数ヶ月の増量)を高インスリン状態で過ごし、ウェイトトレーニングや適切なたんぱく質摂取を組み合わせると、より筋肉が成長します。

実際に、日中の食事で分泌されたインスリンによって、夜中に成長ホルモンによって筋細胞が最大限成長できるように準備する形で、インスリンは成長ホルモンと日周的に関わっていると考えられます。

どう見ても、炭水化物はインスリンを分泌し、インスリンによってもっとマッチョになります。

詳しくはこちら:http://www.metabolismjournal.com/article/0026-0495(88)90097-2/fulltext

2.) 脂肪として貯蔵される炭水化物

前述した通り、炭水化物は脂質ほど簡単に脂肪として貯蔵されません。

どちらにせよ何かしらを余剰に摂取することになるため、例え僅かな差だとしても、余剰な炭水化物が脂肪として貯蔵される可能性が低く燃焼されやすいのであれば、炭水化物を摂取した方がいいかもしれません。

3.) トレーニングエネルギーが保証される

日常生活やトレーニングボリュームに適切な炭水化物量だとしても、炭水化物を最大限に利用できているとは限りません。消費カロリーを低く見積もったり、摂取カロリーを高く見積もったりといった計算ミスによって起こり得ます。

トレーニングに必要な最低限よりもさらに多く炭水化物を摂取すれば、燃料不足でハードにトレーニング出来なくなることはまず無くなるでしょう。

3b.) パンプや筋肥大?

細胞内膨張によって筋肥大が起きるということも研究で示されています。どのように膨張するでしょうか?もちろんめちゃめちゃにパンプさせることです!

炭水化物の場合、多ければ多いほど、凄くパンプします。パンプ自体が筋肥大を引き起こすかもしれないため、無視できません。

常に、特にトレーニング時に、炭水化物を多く摂取していることで、そうではない時と比べて筋肉は肥大しやすいと思われます。

詳しくはこちら:http://journals.lww.com/nsca-scj/Abstract/2014/06000/The_Muscle_Pump___Potential_Mechanisms_and.11.aspx

4.) 食事が多くてもお腹が空く

1日に500g以上もの炭水化物を摂取していると(身体が大きい場合はさらに多く)、毎食摂取するために、高GIで消化しやすいものに偏り始めるかもしれません。

食物繊維が増えると辛くなりますし、もちろん消化吸収を遅らせるレベルの脂質もこの食事方法だと摂取できません。

こうして消化を早めることの副作用的な利点は、食事を素早く「無くせる」ところです。

高たんぱく・超高炭水化物食を消化する時間は、同等のカロリーでも脂質を含んだ食事に比べて短くなります。

それにより、食事の頻度を高められ、炭水化物摂取量を増やせ、成長しやすくなります!大変ではありあますが、「余剰脂質」食の手軽さに若干近づきます。

5.) グリコーゲンによるアナボリズム

前述した通り、貯蔵されたグリコーゲンの存在が筋肥大を促進します。

1日あたりの炭水化物摂取量が増えるほど、平均的なグリコーゲン貯蔵量が高まり、筋肉成長率も高まるでしょう。

6.) 炭水化物のアンチカタボリック作用

炭水化物は非常に強力なアンチカタボリック作用を持ちます。

エネルギー消費の多い身体作用に好まれる燃料であり、多量に摂取した場合も、エネルギー補給のために筋肉を分解することが少なくなります。

特にトレーニング前後で(他の時間帯に比べてカタボリズムが起こりやすい)、炭水化物摂取量が多いほど、筋肉損失の可能性が抑えられ、長期的に見て筋肉が増えやすくなります。

7.) 炭水化物 vs コルチゾール

炭水化物はコルチゾール生成を低下させます。コルチゾールは筋組織にカタボリックなストレスホルモンです。

分泌されると疲労を促進、睡眠を妨害するだけでなく、ほとんどの回復や適応プロセスにおいて悪影響を及ぼします。

高炭水化物食はコルチゾールが減ることを意味し、回復やトレーニング適応が改善され、長期的に筋肉量が多くなります。

高炭水化物・低脂質の欠点

いいえ、この方法は完璧です。高炭水化物・低脂質の方法で増量することによる明確な欠点が3つ存在します。

1.) 圧倒的な食事量

筋肉増量のために必要な高カロリーを摂取するためには、高カロリーを助けてくれる脂質が非常に少ないため、物凄い量の炭水化物を規則正しく摂取しなければいけなくなります。

増量期中に代謝が高まって数週間食事を増やした結果、Broderickが「圧倒的な炭水化物量」と呼ぶものに辿り着きます。

この方法で成長に必要な食事量を摂取するやり方は1つしかなく、それは高頻度で食べることです。

2.) 高頻度での食事

低脂質・高炭水化物でも高カロリー状態に出来ますし、高GI食を多く摂取しすぐに消化することでお腹が空くため、実現は可能です。

しかしながら高頻度での食事は、特に移動が多く、特に忙しい中で買って食べなければいけない場合、かなり面倒です。

3.) 現実的な制限

高たんぱく・高炭水化物・低脂質といった栄養で、外で買える食事がどれくらいあるでしょうか?そんなに多くはないです!

高炭水化物・低脂質食は非常に制限が多く、マクロ栄養素を調整できる家ではなくて、出かけていると特に制限されます。

増量の食事に関して:まとめ

やる気のある人にとっては、高炭水化物・低脂質が利点と欠点を比較すると一番良いように思え、その次に「余剰脂質」食、最後に低炭水化物・高脂質が来るでしょう。

現実的に、そして理論的に考えた結果どうすればいいのでしょうか?脂質摂取とアナボリズムというトピックに関しての私たちの見解は、以下の通りです。(RP Diet 2.0より)

初心者や中級者は、たんぱく質と炭水化物の最適な摂取量が守られている限り、どのマクロ栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)で余剰カロリーを作っても大丈夫です。(「余剰脂質」食)

脂質が多くなることで増量が容易になるため、増量のために十分な食事量を摂取できない人にもお勧めです。

上級者や食事量に問題がない、特に細かい点も最適化したい人は、脂質を最低限に抑え(体重1kgあたり1日0.6〜0.7g)、炭水化物で高カロリーを作り出すのがベストだと考えられます。

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