先日トレーニング初心者の友人と話していて「筋トレして身体を大きくしたいなら筋力も上げなきゃいけないのか?」という質問がありました。
非常に興味深く筋肥大トレーニングの中心となる考えだと思うので、記事にまとめたいと思います。
結論から述べてしまうと、「筋力アップ→筋肥大」ではなくて「筋肥大≒筋力アップ」です。
いまいちパッとしないと思いますので、本章で詳しく説明します。
大きい筋肉=強い筋力
トレーニング理論などを何も考慮せずとも、身体が大きい人は筋力が強いということは簡単に想像がつくと思います。
ゴリゴリのビルダーとひょろひょろのゲーマーが並んでたら、ビルダーの方がベンチプレスでもスクワットでも腕相撲でも勝つと思いますよね。
これは筋肉が大きいほど筋力が強いからです。直感的に理解できることですが、研究でも明らかになっています。
筋肉量と筋肉の相関を示した研究 *(1)
- ベンチプレスやスクワットなど計4種目の1RMをテスト
- 同時に参加者の体組成も測定
- 体重・除脂肪体重と筋力との強い相関関係が明らかになる
身体が大きい=筋力が強いということを示した研究です。
体重が増えるだけでも筋力が強い相関関係が出ていますが、除脂肪体重と筋力の相関関係はさらに強いそうです。
つまり、筋肉量が多い=筋力が強い、ということになります。
筋肥大すれば筋力も強くなる
上記をさらに言い換えると、「身体がデカくなれば筋力は強くなる」ということです。
そのため、「筋肥大のために筋力を上げる必要があるのか?」という問いに対しては「上がっていないとデカくなってないはず」と回答できます。
筋力アップは目的ではないものの、筋肉が増えることで勝手に強くなってしまうんですね。
筋力向上に取り組む必要がない理由
前述した内容から、筋肥大に筋力向上は必須ではないが、必然的に起こってしまうことということがわかったと思います。
しかしながら、「身体をデカくするには重量を追え」とアドバイスをもらって筋力を強くしなければ、と考えている人もいるはずです。
個人的にはこのアドバイスは勘違いされやすいと思います。上記のように筋力を高めることが目的だと思う人が多いです。しかし本来は以下を意味していると思います。
- コンパウンド種目に注力する
- 漸進性過負荷をかける
「重量を追う」のあるべき姿は、上記2点をカバーできているトレーニングです。
身体を効率的に刺激できるコンパウンド種目を優先し、漸進性過負荷(≒多くの場合重量)をかけて身体を適応させます。
「重量を追う」というのはあくまで「漸進性過負荷をかける」と捉えるべきで、1RMを伸ばすという意味ではありません。
筋力を向上させても筋肉が成長するとは限らない
筋肉を大きくしたら確実に筋力は向上しますが、筋力を向上させても筋肉は大きくなるとは限りません。
これは、神経系の発達やテクニックによって筋力(特にビッグ3の1RM)は伸びてしまうからです。
パワーリフターに見る例
特に軽量級のパワーリフターを見たら、身体はそこまで大きくないのにスクワット300kg、ベンチ200kg、デッドリフト300kgと凄まじい重量をあげていることがわかります。
長年かけて神経やテクニックを発達させているからです。※もちろん筋肉も付いていますが、比較的、という話です。
つまり、筋肉を大きくせずに筋力を伸ばすのは可能なのです。
そのため、筋力ばかり追っていても、筋肉は成長しないなんてことがあり得てしまいます。当然ながら筋肥大する可能性もありますが、効率的ではないということです。
ボリュームの調整・低下は効果的かも
とはいえ「筋力向上」を狙ってトレーニングするメリットがゼロという訳ではありません。
多くの場合、筋力向上狙いの場合は低レップになり、トレーニングのボリュームが低下します。
※ボリューム:ここでは重量xレップ数xセット数の数値を意味しています。
筋肥大が目的でも、低ボリュームの期間を設けることで以下のようなメリットが得られます。
- ボリューム低下による疲労からの回復
- 身体のボリュームへの感受性を高める
少しわかりにくいと思うので、1つずつ解説していきます。
ボリューム低下による疲労からの回復
ボリュームが低下すると、文字通り仕事量が少なくなります。そのため身体にかかる負荷が少ないということです。
ここでいう身体の負荷は、筋肉への負荷だと理解してください。
高重量を扱う場合は、筋肉への負荷は減りますが関節系への負担が増える結果となります。
数ヶ月高ボリュームで行っていると、どうしても回復しきれない筋肉が出てきます。
低ボリュームの期間を挟むことで、そういった回復しきれない(一般的に大きい筋肉群)を完全に回復させることができ、また高ボリュームで追い込めるようになります。
そのため、長期的に見て筋肥大にも良い結果となるのです。
身体のボリュームへの感受性を高める
高ボリューム(筋肥大)トレーニングを長期間続けていると、身体はそのうち反応しづらくなってきます。
これは漸進性過負荷の法則によるものです。
成長するにはさらに強い刺激が必要となりますが、既に高ボリュームで行っていたら伸ばしようがありません。
仮にさらにボリュームを増やすと、今度は回復しきれるボリューム以上行うことになり、怪我やオーバートレーニングに繋がります。
回復しきれるボリュームや最低限必要なボリュームなど、ボリュームに関してはマイクイズラテルのMEV・MAV・MRVトレーニングボリューム理論 をオススメします。
そこで低ボリュームの期間を設けると、身体がそのボリュームに適応してくれます。
この低ボリューム期間の後には、また高ボリュームに反応してくれる身体に戻ってくれるため、筋肥大を促進することができます。
低ボリュームのメリット
これらの低ボリュームのメリットは「ディロード」とも深く関わってきます。
ディロードについては、筋トレとディロードの研究結果や効果的な方法【筋肥大の効率向上?】にまとめています。
筋肥大と筋力向上に関して:まとめ
簡単に内容をまとめると以下のような感じです。
- 筋肉が大きくなれば筋力は高くなる
- 筋力が強くなっても筋肥大するとは限らない
- たまに筋力目的の期間を設けることはメリットがある
言いたかったことは、筋力が強くなっていないのなら筋肉も大きくなってないと思います、ということです。※相当上級者でない限り。
そして身体を大きくすることだけが目的であれば、日頃から筋力向上を求めてトレーニングする意味もありません。
筋肥大したいのであれば高重量低レップは非効率的です。ボリュームを稼げるトレーニングにしましょう。
筋トレに効率的なレップ数は?筋肥大にレップ数は関係ない研究で筋肥大に適切なレップ数を解説しています。
また、1日、1週間単位でのセット数も以下にまとめています。これらを読めば間違いなく効果的なメニューを作れるようになるはずです。
読んでいただきありがとうございました!
参考文献